強気が一変、安倍政権が「辺野古和解」に急転したウラ事情

 

この束の間の「余裕」をどう活かすか

和解成立で一時の「余裕」を得たのは、安倍ではなくてオール沖縄側である。もちろん、何をするか分からない安倍政権には油断は禁物で、裁判・行政闘争、選挙闘争、現地実力闘争の3次元の闘いをここでもう一度落ち着いて組み立て直して緩みなく進めていかなければならないことは言うまでもない。

しかし、まずは、2004年から4,300日を超えて辺野古の浜で座り込みを続けつつ状況に応じてカヌー隊を送り出してきたテント村の人々や、14年から600日を超えてキャンプ・シュワブの資材搬入ゲート前で泊まり込んだり朝5時に集まったりして抵抗してきた山城博治=沖縄平和運動センター代表はじめデモ隊の人々にとっては、半年か1年は工事が中止されることになったのだから、ボロボロになった体と心を少しは休めて英気を養うことができるだろう。

翁長知事も、国との間で3つの裁判を抱えて法廷間を走り回らなければならない「泥仕合」状態からひとまず解放されて、今後は、地方自治法に則った、落ち着いた法手続き過程を進めていくことになる。

  1. 前知事の「埋め立て承認」を翁長知事が「取り消し」たことに対して、国が改めて是正の「勧告」や「指示」を出す(第245条の八)。
  2. 県はそれについて「協議」を申し出て、双方は「誠実に協議を行うとともに、相当の期間内に当該協議が調うよう努めなければならない」(第250条)。
  3.  しかし「協議は決裂するので、県は総務省に置かれた「国地方係争処理委員会」に対し国の指示を不服として審査を申し出る(第250条の十三)。委員会は、「国の関与が違法でなく、かつ県の自主性及び自立性を尊重する観点から不当でない」かどうかを審査する。
  4. 委員会の審査で国の指示が違法かつ不当でないという結果となった場合、県は高等裁判所にその指示の取り消しまたは違法の確認を求める訴えをすることができる(第251 条の五)。国の関与が違法かつ不当という結果が出たのに国がそれを無視して指示を実行しようとした場合も県は提訴することになるだろう。
  5. その裁判は恐らく最高裁に持ち込まれ、その判決には両者とも従うのは当然だが、そこで1つの問題は、日本では1959年の「砂川判決」以来の悪名高き「統治行為論」があって、安全保障などに関わる「政治性の高い統治行為は裁判所の審査権の外にある」という司法自らによる3権分立放棄の不文律があるので、放っておけば政府に有利な判決が出るに決まっている(だから、上記の読売が言うように、国は「99%勝つ」と確信していた)。ここを突破する方策があるのか、県も日本の法曹界の力を借りて知恵を絞らなければならない。
  6. 仮にそこで敗れても、県や名護市には、埋め立て用の土砂の持ち込みに関する環境規制をはじめとして、工事の具体化に伴う様々な案件について許認可事項があって、それらすべてを動員して工事を差し止めることになろう。

こうして、県にとっても、一拍置いて、裁判で勝てなかった場合の対策まで含めて入念に準備するわずかなゆとりが生まれたと言える。

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