プーチン、電撃のシリア撤退。ロシアはどんな「目標」を達成したのか?

 

ロシア軍参戦と撤退までの流れ

ここまでの流れを、簡単に振り返っておきましょう。

2011年、「アラブの春」の影響がシリアまでおよび内戦が起こります。ロシアは、シーア派イランと共に、親ロシア・反欧米アサド政権を支援しました。一方、欧米および、サウジ、トルコなどスンニ派諸国は、反アサド派を支援しました。

米ロ代理戦争」と化した、内戦はなかなか決着がつかなかった。しびれを切らしたオバマは2013年8月、「アサド軍は化学兵器を使いレッドラインを越えた!」とし、「シリア攻撃開始」を宣言します。しかし、翌2013年9月には、戦争をドタキャン」し、世界を仰天させました。表向きの理由は、「プーチンの提案で、アサドが化学兵器破棄に合意したから」でした(実際、化学兵器は破棄された)。

オバマはさらに、アサドを支援するイランとの和解に動きます。アメリカから「梯子を外された」「反アサド派」の中から、新たな動きが起こってきました。それがIS。ISは、またたく間にシリアとイラクにまたがる広大な領域を占拠。油田を占領することで潤沢な資金を得て、世界的脅威に成長していきました。

ISはあまりに残酷。というわけで、アメリカは2014年8月、かつて自分が支援していた反アサド派の元一派ISへの空爆を開始します。しかし、ISは一方で、反米アサド政権と戦ってもいる。だから、「都合のいい存在」でもあり、空爆は「ダラダラ」。成果がまったくでなかったのです。ISは、アサド政権を追い詰めていきます。

2015年9月、プーチンロシアは、「人類の敵ISを打倒する!」と宣言し、シリアでの空爆を開始しました。ロシア軍は、米軍が決して手をつけなかった「IS石油インフラ」への猛烈な空爆を繰り返すことで、ISの資金源を断ちます。金を失ったISは、急速に衰えていきました。さらにロシア軍は、「反アサド派」を攻撃することで、同盟者アサドを守ることに成功します。

敵ISおよび反アサド派が十分弱体化した。そして、アサド政権、軍は十分強くなった。この時期を見計らい、ロシアはアメリカと「シリア停戦協議」に入りました。結果、

<シリア内戦>焦点は「停戦の履行できるか」 米露共同声明

毎日新聞 2月23日(火)22時1分配信

 

【ワシントン和田浩明、モスクワ杉尾直哉】約5年間に及ぶシリア内戦を巡り、米国とロシアが22日、シリア時間27日午前0時(日本時間同日午前7時)からの停戦を呼びかけたことを受け、今後の焦点は停戦の履行に移る。

 

25万人以上の死者を出した戦いに終止符を打てるのか。

27日からシリアは停戦に入り、現在も続いています。こう振り返ると、ロシア軍は、

  1. 2015年9月末からシリア空爆開始
  2. ISの石油インフラを集中攻撃することで、ISの資金源を奪った
  3. 反アサド派への攻撃を繰り返し、弱体化させた
  4. アサド政権、軍は、盛り返し、反アサド派を圧倒するようになった
  5. 時期を見計らい、アメリカに停戦を提案
  6. 2016年2月、シリア停戦合意
  7. 2016年3月、ロシア軍、シリアから撤退を開始

という流れです。この間、「わずか半年」という超スピード。同盟者アサドを守り、シリアに(不安定ではあるが)平和をもたらした。アフガンやイラクで「ダラダラダラダラ」戦争をつづけたアメリカと比べると、「神速」といえるでしょう。

print
いま読まれてます

  • プーチン、電撃のシリア撤退。ロシアはどんな「目標」を達成したのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け