日本は叱られ、米国はクビにする。ここまで違う、自衛隊と米軍の内情

 

米軍の指揮官は日本の指揮官よりも、絶対的な権限を持っている

日本では、軍隊に限らず、上官(上司)に従わないという傾向が米国より頻発している。もし、部下が命令通りに動かなかった場合、日本では「部下管理能力ナシ」と中間管理職が叱られることも多いだろう。しかし米軍では、命令に従わない部下を全員クビにして入れ替える決定権を上官が持っていることもある。

この日米共同訓練で見たかぎりでは、米軍の指揮官が日本の指揮官よりも、絶対的な権限を持っているのは、全員の銃の点検のように、指揮官はその権限相応の職務をこなし責任を背負っているからだということがわかる。

別の場で、日米の砲兵隊の射撃訓練を見比べた。陸上自衛隊の射撃では、指揮所から射撃諸元といわれる数字が班長に送られてくると、班長はその数字を担当兵に聞こえるように伝える。射撃諸元とは、装薬の量(射撃距離を調整する)、射撃角度などの照準、弾の種類、信管セット(地面に落ちる前の空中爆発や、地面に落ちて食い込んでから爆発などを選べる)など。班長をふくめ、各担当兵は、黙々と自分の仕事をこなす。

では米軍はどうするか。班長が射撃諸元を怒鳴るところまでは同じ。担当兵が諸元を復唱すると、担当兵以外も全員が復唱する。全ての諸元において、班長~担当兵~全員~班長、と復唱が繰り返される。そのため、1発を撃つまでの時間は、陸上自衛隊よりかかり、練度を比較すると米軍の方が練度か低いようにさえ見える

砲兵たちの全員復唱は、指揮官への責任集中ではなく全員に分散、と見えるかもしれないが、これは、聞き間違え、言い間違えへのチェックだ。また、1発ごとの射撃に対して砲兵全員の意識の統一を感じられた。陸上自衛隊では、砲弾を装填して射撃するときには、装薬手や信管セット兵は、次の弾のための作業をしているので次弾発射までの時間は短いのだが、自分たちの砲の射撃を意識していないで自分の作業を黙々と続けている。米軍の砲では、射撃の瞬間には、必ず自分の作業の手を止めて、射撃することを確認する。

日米どちらのやり方が良いかマズイかは、ケースバイケースで双方の意見が出てよいと思う。ようは、日米のどの差異を見極めるかだ。射撃までの作業が遅いか速いかなどでしか見ていないと「米軍トロイなぁ、我が日本軍は練度高いぞ」ってなことになってしまう。

image by: Shutterstock.com

 

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著者/加藤健二郎
建設技術者→軍事戦争→バグパイプ奏者、と転身してきてる加藤健二郎の多種多様人脈から飛び出すトーク内容は、発想の転換や新案の役に立てるか。
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