混乱の中東で、なぜ今イランが存在感を増してるのか?

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シェール革命で原油大国となり、中東との外交に興味を失いつつあるようにすら見えるアメリカ。その影で「ロシア」と「イラン」が存在感を増しつつあります。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、この2つの国にスポットをあて、今後の中東情勢について読み解いています。

中東で存在感増すロシアとイラン

中東が混乱し、アメリカが中東から手を引き始める中で、ジワジワと存在感を増してきているのはロシアとイランだ。ロシアはシリアが内乱状態となり、アサド大統領率いる政府軍と反政府軍(自由シリア軍)、ISIS(イスラム国)の三つ巴の戦闘が一進一退を続ける中、内戦5年目の2015年になって、突如シリア政府軍を支援し始めた。

シリアでは、反政府軍にアメリカや欧州諸国が支援、サウジアラビアなどアラブ各国も反政府軍へ肩入れし、武器、資金提供を行なうとともにアラブ連盟はシリアの参加を拒否し経済制裁を発動するに至っている。まさに三つ巴の戦いが続き、政府軍の支配地域は国土の4分の1位まで小さくなった

そこへ2015年秋からロシアが今度はシリア政府軍を支援する形で空爆を開始。プーチン大統領が米・欧・露の外相会議などで暫定政権樹立などを根回しし、関係国と停戦合意にこぎつける荒技をみせた。ロシアが欧米の間隙を縫って国際政治の舞台で久しぶりに外交的成果をあげた。ただロシアの意図は「対テロ戦争」を掲げISISのシリア征服の意図を挫折するために戦ったのか、中東でロシアの存在感を増しておきたくて介入したのか、本当の狙いはまだわかっていない

5年以上も内戦の続いているシリアで、一時的にせよロシアが乗り出してきて停戦合意に持ち込んだ外交には世界もびっくりした。むろん政府軍と反政府軍が停戦合意してもISISとの関係まで修復できるのかどうか。プーチンの手腕のみせどころは、その時に本当に問われよう。

イランが活発に欧州外交

さらに世界を驚かせているのは、イランの動きだ。1979年のイラン革命以後、中東でも国際社会でも孤立していたイランが2015年月に欧米など6ヵ国との間で核開発の凍結を約束して長年続いてきた経済制裁を解除された途端一挙に派手な動きをみせ始めたのである。イランの核開発疑惑が発覚したのは2002年。改革派の手によって濃縮ウラン活動は一時停止されるが、アフマディネジャド政権が登場(06年)すると再び濃縮活動を開始した。

このため国連の安保理はウラン濃縮活動の全面禁止と核関連物資の移転禁止を決定。しかしイランはその後も濃縮ウランの製造を始めたため、安保理は4度目の追加制裁決議を決めた。さらに2012年、アメリカはイランから原油を輸入する国の金融機関、EUはイランとの原油、天然ガスの金融取引を禁止するとした。

この経済制裁でイラン経済はガタガタとなり、2013年暮れにイラン・ロウハニ政権、欧米と中国、ロシアを加えた6ヵ国協議でイランのウラン濃縮活動の制限と欧米の経済制裁の一部緩和で合意した。その後も協議は続き、遂に2015年7月にイランは核開発の大幅な制約を受け入れる代わりに安保理決議や欧米各国の独自の経済制裁を解除する歴史的合意が成立した。これが今年1月から実施となったウィーン合意である。

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