アメリカを変えた「大事件」
ところが、2015年3月、アメリカの政策を変更させる大事件が起こります。
それが、「AIIB事件」。
イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などなどが、アメリカの制止を無視して、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)参加を決めた。
「日本以外の親米国家が、俺(アメリカ)の命令を無視して、中国のいうことを聞いた」
このことは大げさではなく、「歴史的大事件」でした。「AIIB事件前」まで、アメリカの主敵はロシアだった。しかし、「AIIB事件後」、アメリカの主敵は中国になったのです。それで、最近アメリカと中国は、南シナ海の埋め立て問題で激しくやりあって
いる。
そして、アメリカは、中国との戦いに集中するためにロシアとの和解に動きました。
アメリカのケリー国務長官が5月12日、ソチにやってきた。
露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」
米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は12日、ロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相とそれぞれ4時間、合わせて8時間に及ぶ会談を行った。
その後ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。
引用部分は短いですが、とても重要な内容を含んでいます。
まず、ケリーさんがロシアに来るのは、「クリミア併合後」はじめてである。日韓のことを考えればわかりますが、両国関係が悪いと、なかなか訪問になりません。
「ケリーさんがやってきた」
それだけでも、まず大事件です。
次に、ケリーさんは、プーチンと4時間会談。ラブロフ外相と4時間会談。テーマは、シリア、イラン、ウクライナだったとか。
それにしても、プーチンと4時間。「悪魔」「ヒトラーの生まれ変わり」と批判していた男と、何をそんなに話したのでしょうね?
これ、個人でもそうですが、仲良くしたくない相手とは、長く話さないものです。仕事でもそうでしょう?取引したくない相手には、あまりご馳走もせず、「すいません次の予定が入っておりますので」などといって、かえってもらうでしょう。
つまり、アメリカ側もロシア側も、「仲直りしたい」という意思がある。
3番目、ケリーさんは決定的なことをいいます。
ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。
「制裁解除もあり得る!!」
「AIIB」前と後で、アメリカの対ロシア姿勢は明らかに変化しています。つまり、「軟化」しているのです。
4番目、この記事では触れられていませんが、ロシアのニュースでいっていました。
ケリーは、「クリミア」について一度も触れなかった
これは、要するに、「クリミアはロシア領と認めないけど、黙認ということで『手打ち』にしたい」ということではないでしょうか?
いずれにしても、「AIIB事件」でアメリカは、「主敵は中国だ!」ということを、ようやく認識したのだと思います。
アメリカはこれまで、三つの地域で問題を抱えていました。つまり
- 中東
- ウクライナーロシア
- 東シナ海、南シナ海ー中国
中東に関して、アメリカはイランとの和解に動き、イスラエルが怒っている。
そして、ウクライナを見捨ててロシアとの和解に動き始めた。これは、三つの戦線のうち2つをしめて、「中国との戦いに集中する」という意志の現れでしょう。