日本の武士道に世界が感動。大戦中、敵兵を命がけで救った日本海軍

 

「沈みゆく敵艦に敬礼」

午後12時35分、「電」は指揮官旗を翻す「エクゼター」に砲撃を開始した。「エクゼター」はボイラー室に被弾して、航行不能に陥った。午後1時10分、「撃ち方止め!」の号令が下され、敵艦に降伏を勧告する信号が発せられた。

しかし、艦長オリバー・ゴードン大佐は降伏せず、マストに「我艦を放棄す、各艦適宜行動せよ」の旗流信号を掲げた。ここで「エクゼター」の乗組員たちは、次々と海中に飛び込み、日本艦隊に向かって、泳ぎ始めたのである。「エクゼター」では、士官が兵に対し、「万一の時は、日本艦の近くに泳いでいけ必ず救助してくれる」といつも話していた。「プリンス・オブ・ウェールズ」沈没の際の日本海軍の行動が記憶にあったのだろう。

「電」は、傾いた「エクゼター」に魚雷を発射して、とどめを刺した。「電」艦内に、「沈みゆく敵艦に敬礼」との放送が流れ、甲板上の乗組員達は、一斉に挙手の敬礼をした。その敬礼に見送られて、「エクゼター」は船尾から沈んでいった。

まもなく「海上ニ浮遊スル敵兵ヲ救助スベシの命令が出された。救命ボートに乗っている者、救命用具をつけて海面に浮かんでいる者に対して、「電」の乗組員は、縄ばしごやロープ、救命浮標などで、救助にあたった。蒼白な顔に救出された喜びの笑みをたたえ、「サンキュウ」と敬礼して甲板にあがってくる者、激しい戦闘によって大怪我をしている者などが、次々と助け出された。

甲板上に収容された将兵には、乾パンとミルクが支給された。「電」によって救助された「エクゼター」乗組員は376名に上った。

重油の海での漂流

駆逐艦「エンカウンター」は、旗艦「エクゼター」が停止した時、その「各艦適宜行動せよ」という命令に従い、単独での航行を続けた。艦長モーガン少佐は「エクゼター」の乗組員を救助すべきかと、一瞬迷ったが、「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」沈没の際の日本海軍の行動を覚えていたので、こう決断したのである。

しかし、その「エンカウンター」も日本艦隊の追撃を受け、8,000メートル東方の海域で、30分後に撃沈された。この時、20歳の砲術士官だったフォール卿は、こう証言している。

艦長とモーターボートに乗って脱出しました。その直後、小さな砲弾が着弾してボートは壊れました。…この直後、私は艦長と共にジャワ海に飛び込みました。

 

間もなく日本の駆逐艦が近づき、われわれに砲を向けました。固唾をのんで見つめておりましたが、何事もせず去っていきました。

この時は、米蘭の潜水艦がジャワ海で行動しており、敵の攻撃をいつ受けるか分からない状況では、国際法上は、海上遭難者を放置しても違法ではない。

「エンカウンター」の乗組員たちは、自艦から流出した重油の海につかり、多くの者が一時的に目が見えなくなった。その状態で、約21時間も漂流した。

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