「今日も残業だ…」
そんなあなたには、長時間労働による健康面への影響が心配されます。
一般的には時間外労働が月80時間を超えると、業務と疾患の関連性が強いと判断されるようです。実際のところ、長時間労働によって疾患リスクはどの程度上昇するのでしょうか。
イギリスで7095人を対象に行われた研究
ロンドン大学のMika Kivimaki教授(疫学・公衆衛生学)らは、心臓病リスクに関連する大規模な調査を行いました。12年のフォローアップ期間中、5年ごとのスクリーニング検査で心疾患の危険因子とされる年齢、血圧、コレステロール値、喫煙習慣、糖尿病の既往歴に加え、平日の平均労働時間を調査しました。
調査対象はイギリスの39~62歳の男女7095人で、研究開始時に心疾患や狭心症と診断されていない人が選ばれました。
長時間労働が心臓病 のリスクを高める
研究の結果、労働時間が長時間になると、心疾患の危険性が著しく上昇することが分かりました。労働時間が1日7~8時間の人に比べ、10時間、11時間の人は心疾患を発症するリスクが増大します。研究では次のような具体的な数字を挙げています。
10時間労働の人:45%のリスク増
11時間労働の人:67%のリスク増
他の危険因子を持ち、長時間労働をしている人は気をつけて!
長時間労働は心臓病の危険因子であることがわかりました。医療現場では、問診を通じて労働時間を把握することができます。各種の検査結果に加え、労働時間を判断材料とすれば、発症の予測を含め、心疾患の診療に役立てられると考えられています。
特に喫煙や糖尿病、高血圧、悪玉コレステロールなど、心臓病の危険因子を持つ人は、長時間労働の危険性を自覚して、日々の体調の変化に敏感になるように心がけましょう。
長時間労働が慢性化しないように、ときには早く帰る日をつくるなど自衛のための行動をとりたいところです。
とはいえ、個人の努力ではどうにもならないことも多いと思われます。長時間労働をただちに改善できそうにない状況下では、まずは禁煙、健康的な食生活と十分な運動、血圧・コレステロール・血糖コントロールなど、生活習慣の改善に努めて、できるだけ自分の身を守るようにしてください。
<参考>
長時間労働は心臓病の危険性を高める 健康管理が有用(日本生活習慣病予防協会)
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:樋口二三男(医学博士、とらうべ顧問産業医)
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