試用期間中だったら正社員を自由にクビに出来るのか…意外な判決

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新しく社員を雇用する時、経営者としては「本当に会社に貢献できる人材か見極めてから雇用したい」というのが本音です。そんな時に便利な制度が「試用期間」。「適性がなければ、本採用はしなくても(もしくは解雇をしても)良い」と考える経営者もいいらっしゃるのでは? 無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、試用期間を理由に解雇した会社vs.社員の裁判を紹介。その意外な判決とは?

試用期間は、自由に解雇ができるのか

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確かに、いきなり購入するのには抵抗感があっても「試してみて、良かったら買う」であれば、その気持ちもかなりなくなりますよね。試してみて気に入らなければ、買わなくて良いわけですし買う側にとっては、非常に良い制度ではないかと個人的には思っています。

これは、会社においても、似た制度があります。それは「試用期間」です。その意味合いとしては「本採用前の人材の適性を判断する期間」としている会社がほとんどでしょう。

では、もしその期間に、「適性が無い」と判断したら本採用はしなくても(もしくは解雇をしても)良いのでしょうか

それについての裁判があります。

ある証券会社で、営業職として採用された社員が試用期間中に「営業の資質が足りない」として解雇されました。その期間の営業成績である手数料収入が非常に低かったというのがその理由です。

それに納得がいかないその社員は「解雇は無効である!」として会社を訴えたのです。

では、その結果はどうなったのか? 試用期間であれば、「能力不足」で解雇はできるのか

裁判の結果、会社が負けました

確かに、この裁判では「手数料収入は高いものとは言えない」として、その営業成績が良くなかったことは認められました

ただ、次の点でこの解雇は無効とされました。

  • その短い期間の成績だけで適性があるかどうか判断すべきでない
  • 試用期間だからといって、充分な理由もなく解雇はできない

いかがでしょうか? もしかすると、みなさんの中には「採用するかどうかは、試用期間に働いてもらってから決めればいい」と、考えている人はいないでしょうか。これは、非常に危険です。

確かに、試用期間の解雇と本採用後の解雇では、全く同じ条件が求められるわけではありません(本採用後の解雇のほうが条件は厳しくなります)。ただ、だからといって、試用期間は安易に解雇が認められるわけではないのです。

「それじゃあ、なんのための試用期間かわからない」と思われる人もいるかも知れません。確かにそれはその通りではあるのですが、裁判ではこれが現実なのです。

では、そうならないようにどうすべきか?ポイントは2つあります。

まずは、採用の段階でしっかりと見極めを行うこと。「試用期間にやめてもらうことができる」と考えていると、その見極めが充分にできていない可能性があります。もしそうでしたら、まずは採用段階の見直しを行いましょう。

もう1つは、受け入れ体制をしっかりと整えること。どんなに優秀な人でも、入社してすぐにその能力を発揮するのは非常に難しい場合が多々あります。成果を出すように本人に一生懸命に努力してもらうのはもちろん重要ですが、その能力を発揮しやすいようにその環境を整備するのは、会社の大切な役割です。

「試用期間は単なるお試し期間」ではなくお互いが高め合えるような期間にしていけると良いですね。

image by: Shutterstock

 

「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理
【経営者、人事担当者、労務担当者は必見!】
企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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