沖縄慰霊の日、朝日・読売両紙は現場の空気をどう伝えたのか?

 

問題は情報漏洩だけではないはずだが…

【読売】の1面トップは「マイナンバー サイバー防御」「年度内に政府新組織」と。10月に始まる共通番号(マイナンバー)制度について、サイバー攻撃対策のため、制度を監督する行政委員会内にセキュリティ対策部門を設け、さらに自治体間ネットワークを集中的に監視する組織を立ち上げるという。制度に対する不安に応えた形で、これまで中央省庁に限られていた、国によるセキュリティの監視や監査の対象を、年金機構を含めた一部特殊法人や独立行政法人にも拡大する。

uttiiの眼

まあ、もちろん、大事な話でないとは言わない。年金情報流出問題の広がりは政権基盤にも関わることだろうから、マイナンバー制度で確実に起こると思われる情報流出に対して、可能な限り事前に対応の体制を整備しておこうということなのだろう。だが、記事の末尾の方で、「一方、今回の問題では関係組織の職員などの意識や知識の欠如が課題となっており、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)は来月にも産官学の有識者を集めて「人材育成強化検討会(仮称)」を開催し、年内に業界横断的な育成の具体策をまとめる」などと書かれているのを見ると、ああ、まだ勉強段階、育成の具体策を検討する段階ということのようだ。唖然、呆然とせざるを得ない。やる気、あるんだろうか。

《読売》の沖縄戦没者追悼式に関する記事は、「平和の礎(いしじ)」の前で、亡くなった家族親族を悼む遺族らの姿を写した写真の下に、「沖縄戦70年 平和の誓い」との見出しがあり、短い記事が付いている(関連記事は、平和宣言と首相挨拶の全文その他)。翁長知事が辺野古移設に反対する考えを平和宣言の中で述べたこと、安倍総理が「沖縄の基地負担に全力を尽くす」と表明するなど、「政治的主張が滲む異例の式典となった」とするが、記事全体は「祈り」をベースにしたもの。見出しを見れば分かるとおり、戦争の悲惨さ、70年という時間が表現された後に付けられている「平和の誓い」は、翁長知事の「平和宣言」を指しているのかもしれないが、なにやら曖昧。なんとなく付けてしまった印象。

以前、ペリリュー島に関する《読売》の記事と、硫黄島に関する《東京》の記事を比較したことがあった。《東京》の記事が悲惨な戦闘のディテールを書き切っていたのに対して、《読売》が全編「美談仕立て」になっていて、生き残った兵士たちの「和解」が基本的なトーンになっていたことを思い出す。

ただし、今朝の《読売》11面に掲載の「戦後70年 伝える」は重要な証言を含む記事。元陸軍大尉伊東孝一さんのインタビューで、凄まじい内容の話は、生き証人の貴重な証言として読まれるべきもの。1,000人の部下を100人にまで減らすこととなった当時24歳の大隊長は、「やはり知恵と勇気をもって、戦争をしないこと。それが一番大事です」と結んでいる。

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『uttiiの電子版ウォッチ』2015/6/24号より一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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沖縄戦 二十四歳の大隊長: 陸軍大尉 伊東孝一の戦い (WW SELECTION)

読売で証言した伊東大尉を描く

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