熊本震度7は「南海トラフ」大地震の前兆か? 危険と隣り合わせの時代へ

 

高橋の見方はあくまでシビアだ。熊本地震が起きた後、現代ビジネスに寄稿した記事で次のように書いている。

今回の熊本の地震は、ステージ3の南海トラフ地震の「前奏曲的」な意味合いが強いと考えられる。筆者は2020年東京オリンピックまでに、南海トラフ地震の発生が懸念される状況にあると考えている。筆者の推計では南海トラフ地震の津波被害者は、47~50万人である。熊本地震を単体のものとしてとらえず、日本全体の「危機の前兆」と認識し、対策を講ずる必要があるのだ。

長野県伊那地方から紀伊半島、四国、そして熊本にいたる日本最大の断層系「中央構造線の西端付近で起こったのが熊本地震である。フィリピンプレートが沈み込む南海トラフとの関連を疑うのはむしろ当然なのかもしれない。

いったん南海トラフが動くと、東京から沖縄付近まで被害が及ぶ可能性があると高橋は言う。東京、大阪、名古屋、神戸といった大都市が巻き込まれることにより、人的、経済的被害は東日本大震災とは比較にならないほど大きいだろう。このうえ、浜岡伊方川内など原子力発電所が破壊されるようなら…想像するのも恐ろしい事態となる。

太古より日本列島は地震、津波、風水害などさまざまな災害に見舞われ、そのつど人々はダメージから立ち直ってきたし、教訓を得て、被災しないよう予防策を講じてきた。

戦後、少なくとも伊勢湾台風の後から阪神淡路大震災が起こるまでは、比較的に大災害の少ない平穏な期間であり、大多数の国民は自然災害をさほど意識しないで暮らしてきた。「日本人は水と安全はただだと思っている」とイザヤ・ベンダサン(山本七平)が評したこともあった。

だが、阪神淡路大震災、東日本大震災と原発事故を経験し、いまや「何が起きても不思議ではない」と思えるほど、危険と隣り合わせの時代を迎えている。

事業仕訳の手法を編み出したことで知られる非営利中立のシンクタンク「構想日本」は、このところ、「防災こそ自分事!!」というフレーズを掲げ、住民が受け身の立場である「他人事」から、防災計画の作成に関わる「自分事」にしていく仕組みづくりを提唱している。

いくら法律が整備され、行政が避難計画をつくっても、いざというときに役に立たないケースが多い。国民一人一人がリスクに向き合い、前向きに防災を考えていくことが何より大切だ。

憲法に緊急事態条項を盛り込むことなどは愚の骨頂。政治権力の暴力化に寄与することはあっても、実際の災害で人命を救うことについては、何ら意味を持たないのである。

image by: 首相官邸

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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