中国からも悲鳴。今、なぜ日本向け「衣類輸出」が激減しているのか?

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例年ならばこの時期、日本向けの秋物衣類の生産が繁忙期を迎えるはずの中国やベトナム。しかし今年は注文が入らず、縫製工場がガラガラの状況という異変に見舞われています。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、その原因とアパレル業界の行く末を詳細に分析しています。

消えた繁忙期~店舗からネットへ~

みなさん、こんにちは。海外生産の現場からの声です。日本輸出向けの工場、中国だけでなくベトナムもガラガラとのこと。通常なら、そろそろ繁忙期を迎える時期なのに、注文が来ないそうです。

その原因は何か。生産現場では、流通の変化がダイレクトに伝わっています。

日本向け縫製工場がガラガラ

ゴールデンウィークが明ける時期は、通常なら秋物が繁忙期を迎える。しかし、今年は状況が変わっているようだ。中国のみならず、ベトナムでも、日本輸出向け縫製工場はガラガラだという。中国では、「日本人は中国を見捨てたんではないか」と訝しがり、ベトナムでは「日本人はベトナムに飽きてしまったんではないか」と疑っているという。

繁忙期になる時期なのに受注が入らない。「本当に繁忙期は来るんですよね」と心配しているらしい。

アパレル生産数量が減少

昨年から、大手アパレル、大手SPAを中心に店舗の縮小が続いている。おそらく、2,000店舗以上は閉鎖されているのではないか。1店舗の店頭在庫が平均1,000万円だとすれば、2,000店舗で200億円減少したことになる。

店舗流通の特徴は、シーズン立ち上がり時期に大量の製品を投入するということだ。それがごっそり消えれば、海外縫製工場のスペースが空いていても不思議はない。

ネットショップなら、サンプルが1点あればいい。全国の数千店舗に在庫されていた商品は、売れるまではサンプルに等しい。店舗流通からネット流通への転換は、大量の在庫を減らすことになる。ある意味で、無駄が減ることだ。

シーズン立ち上がり時期の大量納品がなくなれば、縫製工場の繁忙期がなくなり、生産数が激減する。今後とも、この流れが加速するだろう。

先日、あるセミナーで聞いた話。日本のアパレル産業の小売市場規模は約10兆円。そのために、在庫が20兆円あるとのことだ。もし、流通の無駄がなくなればアパレル生産は半減するということである。今年は、その第一歩を踏み出したということではないか。

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