中国からも悲鳴。今、なぜ日本向け「衣類輸出」が激減しているのか?

 

納期設定が変わる

店舗流通からネット流通への転換は、商品の納期も変えるだろう。店舗であれば、シーズン立ち上がりで商品を揃えなければならないが、ネット販売なら、サンプルがあればいい。むしろ、実需のカーブと、商品投入のカーブを可能な限り、近づけることが求められるのだ。

大型ブランドや大型店舗なら計画生産が必要だが、小規模なブランドであれば、なるべくリードタイムを短くして、期中生産を目指すだろう。この流れが加速すれば、同時期に全アパレルが生産に動きだす。勿論、生産スペースはたちまちふさがり、納期遅れやトラブルが多発するだろう。

店頭だけでなく、ネット上でも、売り逃しが増える。無理に短納期で生産しようとすれば、生産コストも上がってしまう。アパレル企業の利益を圧迫することになる。結局、「ネット販売は儲からない」ということになるかもしれない。

こうした場合、在庫を抱えている中国アパレル企業等から商品を仕入れることになるかもしれない。そうなれば、益々商品の同質化と価格競争に陥るだろう。

見込み生産からオンデマンド生産へ

オンデマンド(On-Demand)とは、英語で「要求(Demand)に応じて」という意味だ。私の周辺では計画生産どころか、オンデマンド生産を目指す企業が増えている。見込み生産ではなく、オーダーメイドや受注生産を目指すのだ。

ファストファッションは、トレンドをいち早く収集・分析し、クイックに生産し、市場に供給するものだった。しかし、トレンド情報が同質化すれば、市場で展開される商品も同質化してしまう。そして、価格競争に陥る

それを防ぐには、トレンド情報を基本にするのではなく、トレンドに左右されないマニアックな顧客特定のデザイナーやクリエイターの熱狂的ファンを対象にすることである。そして、見込み生産ではなく、予約販売や限定販売による確実な生産を行うことである。それができれば、急激な成長は見込めなくても、安定したビジネスが見込めるのだ。

こうしたビジネスモデルの転換もまた、供給を減らすことになる。そして、オンデマンド生産ができない既存の縫製工場では対応できないのだ。やはり、「繁忙期」という言葉は死語になるかもしれない。

image by: Shutterstock

 

j-fashion journal』より一部抜粋

著者/坂口昌章(シナジープランニング代表)
グローバルなファッションビジネスを目指す人のためのメルマガです。繊維ファッション業界が抱えている問題点に正面からズバッと切り込みます。
<<無料サンプルはこちら>>

print
いま読まれてます

  • 中国からも悲鳴。今、なぜ日本向け「衣類輸出」が激減しているのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け