どん底の無印良品が、業績回復のために「顧客」にやらせたこととは?

 

消費者起点の商品開発を始動させた

2001年、消費者起点で商品開発を行うために、顧客と相互にコミュニケーションを行うことができる「モノづくりコミュニティー」をサイト上に開設しました。消費者参加型の商品開発プロジェクトです。

このコミュニティーは、登録した利用者が販売してほしい新商品案を投稿し、商品化を望む利用者の投票が一定数に達した場合に商品化を検討し、販売を目指すというものです。

「モノづくりコミュニティー」は09年に「くらしの良品研究所」へとリニューアルしました。無印良品の「シンプルで使い勝手の良い暮らし」という世界観が含まれたコンテンツを発信すると同時に、利用者に商品などについての意見や感想を寄せてもらい、利用者と協働しながら新たな商品やサービスの開発につなげています。

利用者との協働で商品化された事例を挙げます。利用者の「本に貼るための透明な付箋を商品化して欲しい」という提案に対して、「貼ったまま読める透明付箋紙」という商品が実際に開発されました。これは、従来の付箋では貼った下の部分が隠れて文字などが読めなかったため、付箋を半透明にすることで読み書きができるようにしたものです。

無印良品は消費者と協働して商品を開発する戦略へと舵を切りました。このことが功を奏し、低迷していた業績がV字回復したのです。売上高は03年から16年まで一貫して増加しています。営業利益も増加傾向を示しています。

価値主導の「マーケティング3.0」の時代へ

現代マーケティングの第一人者で経営学者のフィリップ・コトラーは、マーケティングは、製品中心の「マーケティング1.0」から消費者志向の「マーケティング2.0」へと移行し、近年は価値主導の「マーケティング3.0」の時代になっていると提唱しました。消費者の精神に訴え、消費者と共に価値を見出していく「価値共創」の時代になっていると主張しています。

多くの企業は「消費者志向」を標榜しています。しかし、ほとんどが「マーケティング2.0」で止まっているのが現状です。無印良品はマーケティング2.0からの脱却を図り、消費者との価値共創である「マーケティング3.0」を愚直に実行していきました。そのことが、今の無印良品の好調な業績を支えているといえそうです。

image by: Champiofoto / Shutterstock.com

 

店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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