40歳以上の4人に1人が予備軍?「サルコペニア肥満」の危険性

2016.07.20
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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「サルコペニア肥満」というタイプの肥満をご存じでしょうか?

運動量が減り、筋肉量が低下した人に多いため、通常は高齢者に多く見られます。しかし最近では、間違ったダイエット方法や生活習慣の変化などにより、若年層にもサルコペニア肥満が増えているといわれています。いわゆる「メタボ」の症状の「内臓脂肪型肥満」とは違った怖さがある肥満です。

サルコペニア肥満とは何か

 「サルコペニア」(sarcopenia)とは、「加齢性筋肉減少症」のこと。ギリシャ語で筋肉を指す「サルコ」と、不足や減少を意味する「ぺニア」を合わせて作られた言葉です。この筋力低下や筋委縮に加えて、肥満を伴うものがが「サルコペニア肥満」と呼ばれます。

サルコペニア肥満がメタボよりも怖いといわれる理由のひとつは、生活習慣病のリスクが内臓脂肪型肥満の人よりも高くなること。また見た目がやせている人でも起こり得るという特徴があることです。

顕在化しにくいサルコペニア肥満の実態

 サルコペニア肥満は「身体の筋肉が減って、脂肪が増えている状態」です。一般に筋肉(骨格筋)の量は20〜30歳代でピークを迎え、その後は徐々に減少し、80歳代ではピーク時の約55~60%まで減少します。

とくにダイエットで食事制限を行った場合、仮に3kg体重が減ったとしても、脂肪のみが3kg減るわけではありません。実際には筋肉が半分以上減少しているのです。偏ったダイエットを続け、筋肉量が少ない状態で歳を重ねていくと、サルコペニアやサルコペニア肥満となる危険性が高まるといわれます。
 
40歳以上の4人に1人がサルコペニア肥満や予備軍になっているとする説もあるため、誰もがなり得るという認識が必要です。将来的に、筋力の低下から運動量が減り、骨粗鬆症が発生した状態にサルコペニア肥満が加わると、「変形性膝関節症」といった病気になる懸念があります。
 
変形性膝関節症になると膝が痛むため、歩くことが少なくなります。そうしてさらに筋力が低下し、肥満も悪化するという悪循環に陥ります。これが高齢者の寝たきりや要介護状態の原因にもつながっているのです。

サルコペニア肥満の目安

では、どのような場合をサルコペニア肥満と診断されるのでしょうか?

サルコペニアは、筋肉量の低下、筋力の低下、身体能力の低下が診断に関係します。しかし、その基準は国によって異なり、あいまいな部分もあるため、明確な値を示すのは難しいのが現状です。

目安としては、次の両方の条件を満たす場合は、サルコペニア肥満の可能性が高いといえるでしょう。

筋肉の減少=「サルコペニア」の判定条件

・筋肉の割合(筋肉量/体重) 男性:27.3%未満、女性:22.0%未満

脂肪の増加=「肥満」の判定条件

・BMI(体格指数)が25以上

サルコペニア肥満が身体に与える悪影響

実際にサルコペニア肥満の目安となる「筋肉の減少」が起こると、階段を上がるのがつらい、つまずきやすいといった症状が出てきます。

また、「肥満」は高血圧や糖尿病、高脂血症といった病気と密接に結びついており、心疾患や脳卒中といった生活習慣病のリスクを高めます。

実際にサルコペニア肥満の影響として、高血圧の発症リスクが男性では1.7倍、女性では2.3倍になるとの報告もあるのです。

サルコペニア肥満の予防と対策

サルコペニア肥満を防ぐには、筋肉量を落とさないこと、脂肪を溜め込まないことが重要です。筋肉量は加齢とともに減少しますが、運動やトレーニングで減少のスピードを緩やかにすることは十分可能です。

また、ダイエットでは過度な食事制限をせず、バランスのいい食事を心がけることも大切です。筋肉の修復に欠かせないアミノ酸を多く含んでいる、タンパク質は適切に摂取しましょう。

働き盛り世代の健康問題として、メタボリックシンドロームや生活習慣病は広く知られていますが、「筋肉量」も将来の健康を大きく左右する要素です。

これを機に、毎日の生活を振返ってみてはいかがでしょうか。

執筆:井上 愛子(保健師)
監修:岡本 良平(医師、東京医科歯科大学名誉教授)

 

<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師、助産師、看護師、保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

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