小池百合子氏が大臣時代にかけた、一秒の「ワン切り」電話の意味

 

小池は当選したとたんに「冒頭解散」といった都議会との対決姿勢を引っ込め、「議会のみなさまとはしっかり連携させていただく」と語った。さっそくの公約違反である。

テレビ東京の選挙番組に出演した元東京都知事、猪瀬直樹は「必ず議会と衝突します。議会を透明化してもらいたい」と小池にエールを送ったが、猪瀬の私怨に小池が付き合うとは思えない

出馬表明時の公約を意識し、「都政改革本部」をつくる、「情報公開」をする、などといったポーズをとりながらも、既得権益に配慮する安倍官邸との連携をはかる方向に進みそうだ。

もちろん、毎年伸び続ける税収をバックに業界とつるんで利権をほしいままにする自民党都議らの暗部に満身創痍になっても切り込もうというのなら大賛成だ。

そうであれば、祝儀の熱気が冷めることなく都民の支持が広がり、その結果、知事にすり寄る議員も増えて、安倍を脅かす存在になりうるかもしれない。

だが、これまでの小池の政治姿勢からは、時流に乗る器用さや度胸のよさばかりが目立ち、政治信条がどこにあるのかはっきりしない。かつて細川護煕や小沢一郎のもとで政治を学んだころと違い、昨今では保守色が強まりすぎているが、その意味では安倍政権との親和性は高い

小池の心の底には、都議会の自民党利権構造に切り込むとプレッシャーをかけながら、安倍に自分をアピールし、振り向かせたいという、さまざまな因果の織りまざった情念が渦巻いているのではないだろうか。

今回の選挙は、政治理念や政策より、演出力や仕掛けの巧拙が成否を分けた。

東京都民の多くは、平和憲法や脱原発で命を守ろうということより、自民党の闇勢力に立ち向かう女性候補という構図の刺激性にひかれたようだ。その結果、保守内対立にばかり関心が集まり、野党共闘は実らなかった。

小池都政は議会との亀裂が深まって泥沼化する危険と安倍と再接近して特権勢力を利するように動く危険の両面をはらんでいる。これも都民の選択だから仕方がない。

都知事という役どころの檜舞台「東京オリンピック」は楽しみに違いないが、それで日本の人口減少が止まるわけではない。巨額の税金を注ぎ込む盛大な宴のあとに何が残るのだろうか。

image by: 小池ゆりこ オフィシャルサイト

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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