NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は「城の存在意義」について。城には細部にわたって城主の趣味やこだわりが見られ、どれも個性豊かなものばかりです。しかし、近年の「城は権力の象徴」という単純な考え方に著者の西股総生さんは首を傾げます。それはなぜなのでしょうか?さっそく西股さんの主張を見てみましょう。
今回のワンポイント解説(8月14日)
いま、ドラマでは目の離せない権力闘争が展開しているが、今回と次回は、その舞台となっている城のことを考えてみたい。
信長や秀吉が築いた城は、壮麗な天守や高石垣を備えている。それらは、何のために存在しているのだろう?よく、城の天守や石垣、虎口などを権力の象徴、城主の身分・権威を示すもの、だと言う人がいるのだけれど、そうだろうか?いや、僕も城がもつ象徴性を頭から否定するつもりはない。でも、実用品としてこしらえた構造物が結果として象徴性をもつ、あるいは、どうせ造るならカッコよく造りたい、というのと、最初からデモンストレーションを目的として造る、というのは話が別じゃなかろうか? 最近はやりの「見せる城・魅せる城」論は、どうもそこの所がゴッチャになっていませんか?
たとえば、甲冑は敵の攻撃から身を守るための実用品。つまり、戦うための防具だ。でも、オーナーたちは意匠を競う。侍は、命のやり取りをするのが仕事だが、甲冑はその侍が命を預けるもの。だからこそ、意匠にこだわって目立ちたいし、カッコ悪いのはイヤだ。軍艦なんかも、そうだよね。戦うためのバリバリ実用的な兵器なんだけど、デザインにはすごく気をつかっている。だから、結果として、国威や国力を象徴する存在として見られるようになる(長門とかビスマルクとか)。
城も、同じじゃなかろうか? 現存する天守や櫓を見ると、たしかにデザインにはものすごく気をつかっている事がわかる。だから、美しい。でも、イコール権力を象徴する建物として造られた、と考えるのは短絡的すぎないか。そもそも、安土城や大坂城・伏見城が、信長・秀吉の圧倒的権力を象徴するために築かれて、天下万民がひれ伏していたのなら、本能寺の変も関ヶ原の合戦も起きなかったんじゃないの?
あれだけの城を築いて権力を誇示しても、なお謀叛人や簒奪者が続出して政権が崩壊するのなら、壮麗な天守や石垣を築いても効果はなかったことになる。だったら、関ヶ原の後で、もう誰も天守や石垣を築かなくなるんじゃないの?でも、事実は逆。関ヶ原合戦から大坂の陣にかけての時期が、最大の築城ラッシュ。それって、日本中の大名が、来るべき戦争に身がまえていた、って事なんじゃないの?(つづく)(西股総生)
《今週のワンポイントイラスト》
多数派工作展開中の家康。ごっそり駒を持っていかれた三成、どうする…!?(みかめ)
文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)
ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組
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★イベント情報★
その1
散歩かふぇ ちゃらぽこ「六文銭裏講座」次回は8月18日(木)19:00~
テーマは「戦国の城から近世の城へ」です。
その2
7月9日のクラブツーリズム・トークイベントご好評に付、第二弾が開催決定!
12月23日(金・祝)14:00~17:00 場所: 新宿アイランドウィング
『西股総生氏トークイベント《第1部》「今こそ語りたい 第2次上田合戦と大坂の陣」』
『西股総生氏トークイベント《第2部》「対談形式 サブカルチャーで楽しむ歴史と話題ドラマ」』
※二部構成となっております。それぞれ申し込みが必要です。
その3
クラブツーリズム主催のナワバリスト西股によるお城講座
9月24日(土) 関東初の近世城を徹底検証!石垣山一夜城跡 ※キャンセル待ち
コース番号03338-086
10月30日(日) 土の城を見るコツを徹底指南!「増尾城跡」
コース番号03335-086
その4
11月 27日(日)に下記イベントにてナワバリンググッズの販売予定。
・デザインフェスタ(東京ビックサイト)
★縄張りグッズ委託販売中★
神保町書泉グランデ の4階ではTEAM ナワバリングの縄張り図グッズを置いていただいております。お近くにご用事の際には是非お立ち寄りください!!
今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】
「伏見のもっとも長い一日が始まろうとしている」
8月14日、71年前に「日本のいちばん長い日」であったこの日にこのナレーション。三谷幸喜さんにまたやられた。#真田丸— シン・ぬえ (@yosinotennin) 2016年8月14日
細川忠興は甲冑武具や刀装に関して高い美意識を持っていた人で、時には自らの手で作ったりもした。金銀ギラギラの桃山時代にあって、非常にシックなデザインの具足を仕立てている。他の大名も甲冑武具や刀装のことで彼に相談した逸話が残る #真田丸 pic.twitter.com/mwYCu5Y7JR
— 佐藤誠孝 鎧甲冑製作所 (@katchusi) 2016年8月14日
真田丸32話の感想絵を描きました。秀吉亡き後、グイグイくる家康が面白い!したたかで器用な家康は『真の天下人』をリアルに感じられます。対する三成は秀吉の「寂しい男でな」という言葉そのもの。景勝様は頑張って! #真田丸 #丸絵 pic.twitter.com/n41ysNomP8
— KEI-CO (@keico) 2016年8月14日
#真田丸 それにしても家康のやり方はエグい。宴会だけでなく、密かに秀吉の死に関する流言、女衆たちの懐柔、大名たちにあえて「格の差」を見せつけていく婚姻騒動。特に婚姻騒動は、どう転んでも「家康のが格上だ」と見せつける演出があり、秀忠の江戸入りという伏線で戦争を匂わせるのも厭わない。
— 地雷魚『越天の空』新潮社より発売中 (@Jiraygyo) 2016年8月14日
景勝さましっかりしてくだされ!直江殿が再びチベットスナギツネ状態ですぞ!? #真田丸 pic.twitter.com/zJCgv6Ltd4
— カケル (@xKKRx) 2016年8月14日
これ、完全に直江様の扱い(カメラアングル)心得過ぎてますね!!これ、直江様が映ったら視聴者が「あっ…(察し)」ってなるの狙ってますね!?#真田丸
— 千 (@tokikane_jirei) 2016年8月14日
ここで家康は暗に「俺の弾劾を成立させたら、お前たち他の大老も、三成の都合次第で排除されるんだぞ」と言っているわけですね #真田丸
— まとめ管理人 (@1059kanri) 2016年8月14日
完全に一致。 #真田丸 pic.twitter.com/9eNry59Fwc
— わた@シン・呉鎮守府 (@them_isto_cres) 2016年8月14日
長宗我部盛親公…肖像画とどことなく似てるゾw#真田丸 pic.twitter.com/zTDuSsmCub
— はなたろう (@hana_taro2014) 2016年8月14日
「秀吉が死んだ。出浦が火傷した。そうだ、家に帰ろう」
ーー全日本もう帰りたい協会#真田丸 pic.twitter.com/wv4iq2qvdM
— シン・ゆずず (@yuzu0905) 2016年8月14日
三谷さんはできる役者にはどんどんハードル上げてくるからなあ。
今回の兼続さんの台詞無しでの一瞬での心情表現というのもそのハードルだろうな。
見事な演技でした。#真田丸— 砂ぎつね (@lamant_anglaise) 2016年8月14日
今回の印象に残ったシーンは家康様のシーン。それも「控えよ、治部少輔」ではなく、太閤殿下が亡くなって大阪城の方向に手を合わせるシーンと、秀忠に対して「たまには頭を使わんか」と怒鳴ったシーン。あれが家康様の本質なんだなぁ #真田丸
— うっしー(Naoi Takeshi) (@ushi1019) 2016年8月14日
歴史考証とか政治とかはわからないが、人を巻き込んでビジネスを前進させるには、 理屈が正しいだけではダメなんだ。
ビジネスの基礎も学べる大河ドラマ。#真田丸— なしなし (@nashi_nashi_na) 2016年8月14日
自分の出世に忙しくて後継者どころか部下も録に育てられなかった秀吉の晩年に子供ができちゃった…って悲劇だよね。#真田丸
— 槙 (@pausert_method) 2016年8月14日