「都議会のドン」に追われた男が、小池都知事と共に仕掛ける復讐劇

 

内田については、にわかに「都議会のドン」などと各メディアで悪辣ぶりが報じられている。昔から各地方の、とりわけ自民党には公共事業の利権をがっちりと握り、カネと票と威圧的な対人力で「ボス政治」をおこなう闇権力者が絶えない。内田もその一人だが、彼が特別なのは、スウェーデンの国家予算に匹敵するほどの財政規模を誇る東京都の議会を牛耳ってきたことである。

オリンピックも、築地市場移転も、巨大な公共工事をともなうのは言うまでもない。彼の地元は国家権力の集中する千代田区で、そこに本社がある東光電気工事の監査役もつとめている。東光電気工事は、大手ゼネコンとジョイントベンチャーを組み、バレーボール会場の「有明アリーナ」(落札額360億2,880万円)、水泳の「オリンピックアクアティクスセンター」(469億8,000万円)の工事を落札した

内田がなぜ「都議会のドン」といわれるまでになったのかについて、猪瀬直樹元都知事はこう語る。

自民党の都知事の公認候補は、党本部ではなく、都連が決めます。都連の会長は石原伸晃氏ですが、しょせんは帽子です。実際の公認権を持っているのは幹事長の内田氏です。都議会議員はもちろん、東京都選出の国会議員の公認権も、内田氏が持っています。だから、内田氏は国会議員より偉い。国会議員は、都議会議員が動かなければ当選できません。だからこそ、内田氏に絶大な権力が集まる。内田氏は、幹事長のポストに10年以上も居座り続けて、勢力を広げています。都知事が交代しても、内田氏はずっと居座り続ける。10年も幹事長をやると、権力はすさまじいものになります。
(NEWS PICKS より)

都連の幹事長には、「自民党東京都支部連合会」の約10億円にものぼる年間収入を、活動資金として所属議員に配分する権限がある。資金をもらえるか、干されるかは幹事長しだいとなれば、内田の顔色をうかがう議員ばかりになるのは、残念ながら仕方のない現実かもしれない。

内田が落選中も含め10年もその幹事長ポストに居座ることになったきっかけともいえるのが、浜渦副知事の追い落としで示した凄味だろう。内田と浜渦は建設利権をめぐってしばしば対立していたといわれる。

浜渦副知事の独断専行ぶりに業を煮やした都議会議長、内田茂は、学校法人をめぐる「ヤラセ質問疑惑」で百条委員会を設置、浜渦が「ヤラセ」を否定すると、内田は偽証で刑事告発するなどと言って、石原都知事に激しく迫った。さすがの石原も、この内田の迫力に屈し、頼りにしていた浜渦の更迭を了承、問責決議をへて浜渦は辞職を余儀なくされた。石原が会見で「泣いて馬謖(ばしよく)を斬る」と苦渋の決断を語ったのは有名な話だ。

浜渦辞任の3か月後、内田は自民党東京都連の幹事長となり、カネや候補者公認の権限を握り、民主党もうまく抱き込んで「都議会のドン」といわれるほどの力を蓄えてゆく。

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