「都議会のドン」に追われた男が、小池都知事と共に仕掛ける復讐劇

 

浜渦はその後、石原の世話で東京都の外郭団体「第三セクター東京交通会館副社長に天下りするが、辞職から1年後、早くも石原に都の参与兼任として呼び戻された。このときは、石原の要請を内田が受け入れ、「貸し借り」の勘定を合わせたということだろう。

裏の汚れ役もこなし、ボスになりたがるという点で、内田と浜渦の二人は似た者どうしだ。参与として都庁に舞い戻った浜渦は、大手町再開発、築地移転などで、内田との間の調整役を担った。

内田がのちに都知事になった猪瀬直樹とはソリが合わず、今になって猪瀬から過去の行状を非難されているのは周知のとおりだが、浜渦も猪瀬が都知事になって参与のポストから追い出されている

浜渦が政界を引退した石原から小池に乗り換えて、未練のある都政になんらかの関与をしたいという気があるのはたしかだろう。ならば、小池のほうは浜渦をどう使いたいと思っているのだろうか。内田の牛耳る都議会を「大改革」するために浜渦の力を借りたいのか、それとも、内田の手の内や気性を熟知している浜渦に内田との間を調整してほしいのか。

本気になって内田の権力を削ごうということなら、「大阪維新の会のような地域政党をつくって都議選をめざし、自民党都議団に手を突っ込んで、分裂を誘うという手も考えられる。しかし、そのためには自民党都議のなかに、大阪でいえば松井一郎(現大阪府知事)や浅田均(現参院議員)のような異端児が必要だ。が、少なくともいまのところ、そのような存在は姿を現していない。

「新党」結成の可能性を否定しない小池都知事の姿勢は、内田ら都議会自民党へのある種の脅しではないかと思われるが、内田がかたくなに「反小池」を貫いて議会運営を主導するようなら、この先、都政の混乱は必至だ。当面、小池知事は内田の動きに応じて、議会対策を練っていくことになるだろう。根回しや交渉ごとが嫌いな小池は、都政の裏事情に通じ、内田と行政の調整役としての実績がある浜渦の力をあてにせざるを得ないということかもしれない。

小池都知事は「都政改革本部」を設け、橋下のブレーンだった上山信一慶応大教授ら5人の学識経験者をメンバーに選定、今後も順次、メンバーを加えていく予定のようだが、会議や組織をつくれば改革ができるわけではない。安倍首相などは改革改革と言いながら実現性が怪しいまま、やたら有識者会議ばかり増やしているのが現状だ。

小池都知事の掲げる「東京大改革」が選挙用の見せかけだったのかどうか。今のところはなんとも言えないが、石原の腹心だった元副知事を頼るようでは、せいぜい「利権の調整しかできないだろう。さしあたり、さまざまな利権がからみ、土壌汚染に対する不安がぬぐえないまま新市場の開場予定日が迫る築地市場・豊洲移転問題にどう対処するかが、試金石といえるかもしれない。

image by: 小池ゆりこ オフィシャルサイト

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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