実は法律で認められぬ遺言ビデオ。それでも映像に残しておくべき理由

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スマホやホームビデオで気軽に映像を残すことができるようになった時代ですが、「映像遺言書」は法的に認められるのでしょうか。無料メルマガ『こころをつなぐ、相続のハナシ』では現役行政書士で相続問題に詳しい山田和美さんが、そんな疑問に答えてくださっています。

遺言書を映像で残しても、その内容は有効か?

最近では、スマートフォンも普及、また家庭用のビデオカメラも安価になりました。皆様のご家庭にも、映像を撮影できる機器が1台はあるかもしれません。こういった背景もあり、ご家庭で気軽に映像を撮影する機会も増えたのではないかと思います。

では、遺言書も、映像で残すことができるのでしょうか。

残念ながら、この答えはNOです。遺言書は、法律でしっかりと方式が定められている法的文書。映像で残した遺言書は、遺言書とは認められません。そのため、いくら映像で、「私の自宅は長男に相続させたい」と話していたとしても、何ら法的拘束力が生じないこととなります。

もちろんその映像をもとに、実際に相続が起きた後、手続きを行うことも、不可能です。確かに映像のほうが、書面よりも本人が話している事が明白なのでよいような気もするのですが、今の法律で認められていない以上、映像は、遺言書にはなりえない、ということなんですね。

しかし、一方で、残された家族へ想いを残す手段としては、映像は非常に優れた方法です。大切な家族の死後、自分たちに向けたビデオメッセージが残っているというのは、ご家族にとって心の支えにもなるのではないでしょうか。

また、想いを知ることで、相続争いを防ぐ効果も期待できます。

相続争いは往々にして、亡くなった方の想いがわからない、もしくは、亡くなった方の想いを知ろうとしない、というところから生じるためです。

こういった特性を生かして、財産の分け方など法的な効果を持たせたい内容は遺言書にしっかりと書き、そして、想いの部分は映像で残す、という方法が良いと思います。

映像でのこした遺言書には法的な効果はありませんが、従来通り紙でのこした遺言書と組み合わせて使用することで、想いのこもった家族への贈り物となることでしょう。

遺言書も終活も、ぜひ、残された方の想いや、残された方が行うべき手続きの流れといった、「残される側」の立場に立って行なっていただきたいと思います。そうすることで、本当に意味のある遺言書の作成や終活ができるのです。

image by: Shutterstock

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