さぁ夏休み。子どもの「水が怖い!」を克服させるには?

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暑い夏は、子どもにおもいっきりプールで遊んでもらいたい! けど、どうしても水嫌いがなおらない…と悩むパパママさんへ。まずは、子どもの水への恐怖心を取り除くことからはじめませんか? 現役教師で 『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』の著者・松尾英明さんが、教師目線での指導法を公開されています。

水泳で顔に水がかかるのを怖がる子どもへの指導

昨日のセミナーの後の懇親会で受けた質問。
水泳指導で、水を極度に怖がる子どもがいる。顔に水がわずかにでもかかるのもダメだという。どうすればいいかという話。

とりあえずプールに放り込んで根性を出せというのは、もう大昔の方法である。こんなことをしたら、プールサイドに近寄ることすら恐怖になる。最悪、水泳のある日に学校に来なくなるかもしれない。根性ではどうにかなる部分とならない部分がある。

根性論でなく根本・本質論で考える。

体育指導も安全・安心が全てのベース。これがないと始まらない。つまり、まずは恐怖感を取り除くしかない。あれこれ技能的な指導をするのは、そのずっと後である。

「顔に水がかかるのが怖い」というのは、あくまで現象である。その根本は、「命の危険」を感じるからである。顔は、呼吸器である口に近い。つまり、極端な話「息が吸えなくなって溺れて死ぬかもしれない」という恐怖感がある。また、目をつぶると、見えなくなってこれも一層怖い。だから、他の部位は大丈夫でも、顔、特に目と口の周辺に水がかかるのだけは極度に嫌がる。

安全・安心な状況で慣れさせる必要がある。スモールステップでだんだん下から水をかける、というのはよくやると思うが、理に適っている。ちなみに、体が水につかっている面積が大きいほど、恐怖感が増す。「顔を水につける」というだけでも、体の他の部分がどれだけ水に触れているかで恐怖感は変わる。全身が水にふれる「けのび」の状態は一番レベルが高い。胸まで水に浸かって顔を水につけるのもレベルが高い。顔を水につけるという行為は同じなのだが、膝までの浅いプールの方が気持ち的に楽である。プールサイドに洗面器を用意して、そこに顔をつけるというようなステップをとる先生もいる。要は、目の前の子どもの実態に合わせて、必要なステップを模索し、用意してあげる。

ちなみに、プール自体の深さを変えられない場合、プールに足場のようなものを沈めて置く方法もある。(これをする場合は、特に足をケガしないように材質等の安全面に十分配慮する必要がある。)

また、恐怖感の逆は安心感。安心感を引き起こす行為の一例は、抱っことおんぶである。水の中で指導者が抱っこやおんぶをして慣らす方法もある。スイミングスクールで幼児を指導するコーチなどが、割とよくやっている。おんぶして歩いている内に、「うっかり」水がはねてしまったり、「うっかり」すべってしまう。そうすると、子どもの顔に水がかかる。「ごめんごめん」などと言いながら、プールを歩き回る。そういう方法もある。

また、晴れの日よりも雨やくもりの日の方が恐怖感は増す。明るいよりも暗い方が、温かいより冷たい方が恐怖感が増すのは当然である。

ちなみに、やや別の例になるが、シャワーが怖いという場合、その冷たさにも恐怖の原因の可能性を考える。冷たさというのは、体を硬直させる。体の硬直は、恐怖時にも起きる。恐怖時の体の状態をつくれば、恐怖感が引き起こされる。体と心はリンクしているのだから、当然である。試しに風呂で頭を洗う時に、真水で洗ってみるとわかる。慣れないと、水がかかった瞬間にぐっと体が引き締まり、恐怖感に近い感覚があるはずである。

逆に言えば、シャワー一つも、みんなで楽しい雰囲気を作ると怖くなくなるという面もある。例えば「かえるの歌」をクラスで合唱しながら浴びてみる。1番をみんなで歌い終えるまで浴びる。割合楽しくやれる。(しかし、水が極度に苦手な子どもにとってはやはり恐怖のシャワーである。)

要は、「そんなことまで!?」というぐらい用意しないと、恐怖感は取り除けないということである。
正直かなり手間である。
しかし、手間暇かけた分だけ、顔を水につけられるようになった時の喜びは大きい。決して根性論や相手への原因論に陥ることなく、指導する自分自身との戦いだと思って色々試していきたい。

image by:Shutterstock

 

「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術
著者/松尾英明
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