「他店より1円でも高い場合…」に隠された「値引き競争回避」のカラクリ

 

最近、お店の宣伝や経済誌などで「コミット」や「コミットメント」などという単語をよく見聞きします。経済学では「責任を伴う誓約」を意味するとのことなのですが、なぜこの言葉が多用されているのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、家電量販店の「最低価格保証」と呼ばれる販売促進法を取り上げ、「コミットメント」についてわかりやすく解説して下さいました。

「コミットメント」で組織は強くなる

家電量販店で「他店より高い場合は他店と同じ値段まで値引きします」と宣言してあるPOPやチラシを見かけることがあると思います。これは「最低価格保証」と呼ばれる価格政策や販売促進に該当します。経済学においては「コミットメント」と呼ばれます。

最低価格保証は一見すると値下げ競争に陥ってしまうように感じられますが、競合店が値下げで対抗しても、最低価格保証をした店はさらに値下げで対抗することになるので、競合店は値下げしても顧客を奪うことはできません。そのため、最低価格保証を行うことで結果として値引き競争を回避することができます。

コミットメントにより自身の選択の幅を狭めることで逆に得をする場合があり、経済学の一分野であるゲーム理論によって分析されています。コミットメントは単なる口約束ではなく、実効性のある仕組みを構築する必要があります。

『史記・項羽本紀』にある「糧を棄て船を沈む」もコミットメントといえます。楚の項羽は鉅鹿の戦いで、自軍の船を沈め、釜を壊し、退路を絶って兵に必死の覚悟を迫ることで秦軍に大勝することができました。退路を断つ仕組みを構築することで戦いを有利に進めることができたのです。

コミットメントは組織でも応用できます。項羽のように退路を断つようなコミットメントでもいいのですが、今は従業員優位の時代なのでお勧めはできません。従業員優位の状況に適したコミットメントが求められます。たとえば、「我が社は従業員を大切にします」といったコミットメントを行うことは有効的といえます。

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