なぜ富士フイルムは「本業」が崩壊しても業績は好調なのか?

 

GEは10年ごとに事業組み換え

将来を見通しながら事業の組み換えを行い続け、今なおアメリカの代表銘柄になっているのがGEゼネラル・エレクロトニクスだ。1878年にトーマス・エジソンが電気照明会社として起業して以来、総合電気メーカーとして長く世界のトップ企業として存在し続けたが、日本などの新興国が追いかけ力をつけてくると、重電メーカー、コンピューターのメーカーへと変わり、1970年代にはプラスチックを生産する企業に変わった。

1981年ジャック・ウェルチがCEOに就任すると3大ネットワークを占めていたNBCを保有していたRCAを当時で最大の買収価格で買い取ったが、1990年代にはRCAを売却し金融、保険、リース業へ参入した。現在の主要事業は、金融サービスのほか電力、オイル、ガス、発電ビジネスのほか、医療用機器、鉄道車輌、エネルギー関連のインフラ、不動産などの多岐にわたっている。GEといえばエジソンが作った会社というイメージが強いものの、その内容はほぼ10年ごとに主要事業が入れ替わっているのだ。むろん、突然変更しているわけではなく、主要事業が稼いでいる時期に次の時代を見据えて事業の入れ替えをスムーズに図ってきている。だからこそ、GEはつねにアメリカを代表するダウ銘柄として存在し続けているのだろう。

日本では富士フイルムが組み換えに成功

日本で事業の入れ替えに成功した有名企業は富士フイルムHDだ。HD会長でCEOの古森重隆氏は「うちは利益の3分の2を稼いでいた写真フィルム事業がデジタル化によってどんどん減りとうとう本業を失った。2000年代に入ってリストラを進めたが、リストラだけでは夢も会社の将来像も描けず、何とか生き延びることを考えざるを得ず新規事業や経営の多角化を目指した。世界の電機メーカーは、いま事業の組み換え、事業シフトを進めているが、とにかくまだ市場が育ち始めたばかりでも、種の段階から手に入れるようにしている。将来性があるなら当社の資金力を生かし、写真で育んできた技術力生産技術生産管理も応用するようにしている」と指摘する。

富士フイルムは現在、ライフサイエンス、関連会社の富士ゼロックス、高機能材料、印刷、デジカメなどイメージング──など5領域を手掛けている。自社のもつ技術の隣の領域に攻めていきM&Aで何本かの成長の柱を作っていくのが大方針だという。

なかでも医療分野に力を注ぐ、富山化学工業、米セルラー・ダイナミックス・インターナショナルなどの企業を買収、アルツハイマー治療薬や心臓疾患、パーキンソン病などの治験も進めており、18年には200億円くらいの売上高を見込んでいる。

一時は60%前後の写真フィルムのシェアをもち名門・安泰企業だった。それがデジタルカメラの登場でフィルム需要が激減、構造改革に乗り遅れた名門コダックが経営破綻した。富士フイルムは写真で培った技術の生かす道を考え、いずれ大樹に育つとみたら、ヒットが出るまで支えるとし、自社技術と合う企業を探し次々と新商品を作り出していったのだ。化粧品事業にまで手を伸ばし、化粧をするのではなく身体の内部からシミなどをとる技術を開発し、フィルム企業のイメージを一変させたりして、世間を驚かせた。

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