今や生活の必需品になりつつある「スマートフォン」ですが、昼夜問わずいろいろな場所で使っていると、目だけでなく、手も疲れてきますよね。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、人間工学の観点から、著者の徳田先生が「疲れないスマートフォンの選び方」を教えています。ポイントは“親指”にあるそうです。
健康的なスマホのサイズとは
エルゴノミクスでスマホを研究
人間工学(エルゴノミクス)という学問分野があります。人間の生理的・心理的な特徴をもとに、「人間にとっての使いやすさ」という視点から、装置や機械などのデザインを研究する学問です。
エルゴノミクスの目的は、疲れやストレスをなるべく感じずに人間が装置や機械を扱えるようになることです。長時間の同一動作は関節や腱、筋肉などに影響を及ぼすことがあり、装置や機械などのデザインもその影響に関係する重要な因子だからこのような学問が発達してきたのです。
さて、現代の日本人が最も長時間利用している機械とは何でしょうか。もちろん、スマホです。多くの人々は、起きている時間の中のかなりの割合でスマホを扱う時間に費やしているでしょう。
鍵は「親指」
スマホ動作についてのエルゴノミクスのエキスパートであるハーバード大のジャック・デナーレイン客員教授は、鍵は「親指」にある、と述べています。親指の動ける範囲が、スマホの画面のどこまで届くかがポイントです。親指がタッチスクリーンをスワイプし、アイコンをタップする。この動作がシームレスに行われるのがよいのです。
その意味では、今年3月に登場した4インチ(10.1センチ)のiPhone SEは、これまでのスマホと比べて、エルゴノミクス的に良くなっており、扱いやすくなっているといえます。
手でモノを握っているとき、その手の親指の動きはかなり制限されてしまいます。そのため、サイズの大きなスマホを使っていると、親指で届かない部位があるために、その都度にスマホを握りなおす必要性が出てきます。その「握りなおす」時がスマホ落下のリスクが最も大きいときです。「スマホは小さいのがよい」の理由は、落下のリスクが小さいからともいえます。
タッチスクリーンの中央部がスイートスポット
また、タッチスクリーン上のアイコンが存在する場所も重要です。デナーレイン客員教授によると、それは「スマホ画面の中央付近」であるという。一般的には仮想キーボードはスマホ画面の下部に出ていることが多いですね。
エルゴノミクスの研究では、親指の付け根に近すぎると、親指の動作のパフォーマンスが最も低くなることが示されています。実際、向かって右下の隅の部分は、右親指ではタッチ不可能な場所となります。
仮想キーボードが中央にくるようにすると、親指の関節可動域のちょうど良い位置におかれることになるので、長時間の動作継続でも関節の障害をきたしにくいということです。メーカーもこの知見を活かして開発をしてほしいところですね。