豊洲市場「空洞」問題を意図的に長引かせようとしている真犯人

 

本来、豊洲は生鮮食料品の市場としてはならない場所である。たとえ有識者会議の提言通り、敷地全体に盛土を施していたとしても、埋め立て地特有の軟弱地盤であり、ひとたび巨大地震が起きれば、土壌改良や盛土による安全性など吹き飛んでしまう。

盛土はあくまで、土壌汚染対策である。大地震が起きれば液状化現象で地下汚水は湧きあがって地上に滲み出してくるだろう。

もし仮に、建物地下のコンクリート空洞が地震対策であるというのなら、担当者はそう説明すればいいではないか。逃げ回っている場合ではない。

また、一部報道によると、「空洞は土壌汚染が再び見つかった場合に備え、パワーショベルが作業できる場所とする目的でつくられた」と都の幹部が話しているというが、それならそれで一刻も早く公表し、これまでの広報との違いについて、謝罪するなり責任をとるなりしなければならないのではないか。

いずれにせよ、豊洲移転計画は最初から間違っていた。この深刻な問題の元凶は石原慎太郎元知事である。

ほかに4~5か所の有力候補地が臨海地区にあったにもかかわらず、築地市場を豊洲の東京ガス工場跡地へ移転することを最終的に決断したのは石原元知事のほか、誰もいない。

2000年7月から2005年6月まで副知事をつとめた浜渦武生に豊洲の件は任せていたと石原は弁明しているようだが、実際に用地を購入したのは2011年であり、とっくに浜渦は副知事を退いていた

2011年3月25日に東京ガスが公表した「豊洲地区用地における東京都との土地売買契約ならびに土壌汚染対策費の負担に関する合意について」という文書によると、約10.5ヘクタールの工場跡地を東京都が東京ガスから559億円で買い、土壌汚染対策費として東京ガスに78億円を負担させている。

これは東京ガス関係だけの数字で、敷地全体40ヘクタールの用地取得費は1860億円にものぼっている。

事前に東京ガスが自前で土壌改良工事をしたとはいえ、その後に基準値の4万3000倍ものベンゼンや860倍ものシアン化合物が測定された土地をこんなに高い値段で買ってくれるバカなところは東京都以外にありえない。

石原慎太郎に「わが都政の回顧録 東京革命」という著書がある。回顧録というのはだいたい自慢話である。石原が革命をなしたはずの東京。小池はその東京を大改革したいというのだから面白い。

回顧録のなかで、石原は豊洲市場問題について、こう述べている。

移転が予定されていた東京ガス跡地にも…驚くほど多量の危険物質が埋もれていることが分かりました…が、現代の日本の様々な技術を駆使すれば、この問題は当然解消される…最終的には化学的な手立てを講じて汚染された土壌を正常なものにする技術的なメドもついた…

2014年から15年にかけて執筆された文章である。日本の技術力への盲信。というより、豊洲移転ありきで、汚染問題の何かいい解決策はないものかと考えたとき、「日本の技術力」という信仰は、石原自身のなによりの精神安定剤になったのだろう。

地下の空洞も石原の発言に端を発しているという見方がある。その根拠は2008年5月30日の定例会見における石原都知事の以下の発言だ。

「この間、担当の局長に言ったんですがね、もっと違う発想でものを考えたらどうだと。日大の名誉教授をしている海洋工学の専門家によると、土を全部さらった後、地下2階ぐらいに、3メートル、2メートル、1メートルか、そういうコンクリートの箱を埋め込み、市場としてのインフラを支える、そのほうがずっと安くて早く終わるんじゃないかということでしたね」

この担当局長というのが、中央卸売市場長だった比留間英人で、「コストを下げるため知事からコンクリ案について調べるよう指示があった。検討後、コンクリ案は余計に費用がかかるため断念しますと知事に報告した」と各メディアの取材に対して語っている。

コンクリートの箱を地下に埋め込むという発想がその後も、都の担当者に引き継がれていたからこそ、今の空洞問題につながっているのだろう。

にもかかわらず、石原は9月13日、BSフジ「プライムニュース」に出演し「(知事時代の)僕はだまされたんですね結局してない仕事をしたことにして予算を出したわけですから。その金、どこ行ったんですかね?」と他人事のように語った。

大プロジェクトの最高責任者であり、最終チェックを行う立場であったという自覚はまるで感じられない。

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