「サービス残業」 or 「定時に帰って嫌われる」どっちを選ぶ?

2016.09.27
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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今回は、長時間労働と心理学合わせて考えながら、過労死や長時間労働を防ぐためのヒントを探していきたいと思います。

「 嫌われる勇気 」

この言葉を覚えておいてくださいね。
それでは詳しく見ていきましょう。

2014年11月「過労死等防止対策推進法」が制定されました。

過労死の問題はもう20年近く議論され、対策も考えられてきましたが、厚生労働省の統計によると過労死が減ってきたとは言いがたい状況です。

過労死の原因としてよく指摘されるのが長時間労働です。これは企業の経営環境の厳しさによる人手不足やブラック企業の問題も関わっています。

しかし、必ずしも特別厳しい経営環境やブラック企業でない場合にも長時間労働や過労死は起こっているようです。これはなぜなのでしょうか。

職場にいないことで嫌われるのが怖い

日本では「周囲の目を気にして」の長時間働いてしまう現象が指摘されます。

これは、上司や同僚に「がんばってる」をアピールすることで自分の評価を維持したり、職場の居心地を良くしたい意識によるものです。

長時間働くことが必ずしも「がんばっている」ことや「成果を出す」ことにつながるわけではありません。

ですが、みんなが忙しくてイライラしている時には、その場にいないと何を言われているかわかりません。つまり、「職場にいないことで嫌われるのが怖い」ので早く出勤して遅くまで残るという訳なのです。

「嫌われる勇気」で嫌われる不安を軽くしよう

では、私たち労働者はどうすればよいのでしょうか。

実は長時間労働のもう一つの背景として「責任の範囲がわからない」ことで「どこまで仕事をすれば評価を維持できるかわからない」という状況も指摘されています。

この責任の曖昧さがなくなれば嫌われる心配は軽くなるでしょう。

逆説的ですが、職場で嫌われる心配を軽くするためにはアドラー心理学で言われている「嫌われる(かもしれない)勇気」が役立つ場合もあります。

 人はしょせん「お互い様」

この勇気のポイントは2つです。

まずアドラー心理学では「お互い様」という共同体感覚、つまりそれぞれに立場や価値観は違うことを強調します。

つまり、人の気持ちや価値観はそれぞれ違って良いので、「快く思われない時もあるものだ」と割り切ることをススメます。もちろん、私たちが人を「快く思えない時もあるものだ」とセットで割り切るものです。

もう一つは自分の方針をしっかりと持つことです。

お仕事に関しては「会社にどこまで尽せるか、どこからは尽くせないか」を考えておくことです。もちろん、一人よがりに決めてはいけません。

自分が働かないと会社も困るわけですが、同時に倒れて働けなくなっても困るわけです。倒れない範囲で会社に何をどの程度貢献できるか、会社の期待と自分の限界のバランスで考える必要があります。

「嫌われる勇気」で思い切って自分のやるべき範囲を定める

ここまで準備ができたら、あとはその実行とコミュニケーションです。

日頃から「これは自分には(時間的、体力的に)難しいですが、ここまでは全力でがんばります」を周囲に伝えておきましょう。

もちろん「お互い様」ですから周囲の意見も聞き入れて方針を見直す必要もありますが、このコミュニケーションを通じて「自分がやるべき範囲」が自分と周囲で共有されます。

「やるべきことはやっている」、そして「それは周知されている」のですから、時にあなたが職場にいないことがあっても、嫌われる心配はある程度は軽くなることでしょう。

厳しい経営環境やブラック企業では難しいかもしれません。周囲の感覚やモラルで結果も変わります。

ですが、嫌われる勇気で改善する事例もあります。

状況次第では試みる価値はあるかもしれません。

執筆:杉山 崇(神奈川大学人間科学部 / 大学院人間科学研究科教授)

 

<執筆者プロフィール>
杉山 崇(すぎやま・たかし)
神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科教授。教育支援センター副所長、心理相談センター所長(15年4月から)臨床心理士、公益社団法人日本心理学会代議員、キャリアコンサルティング技能士。
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