百人一首でもおなじみの「天つ風」から始まる和歌。その中で使われている「つ」という助詞と、あなたの目の前に常にあるものの意外な共通点があること、あなたは知っていますか? ヒントは、私たちのマブタの下にあるもの。無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』の記事の中から正解を見つけてみてください。同僚や部下に話したくなること間違いなしですよ。
意外なところの「つ」の話
天つ風 雲の通ひ路 吹きとじよ
乙女の姿 しばし止めむ
(僧正遍照 古今集巻十七・雑上〈八七二〉)
天の風よ (天女の通るという)雲の通り道を 吹いて閉じておくれ
舞を舞った天女たちの姿を いましばしここに止めたいので
さて、青空にところどころ浮かぶ雲を見ていて思い出した歌が、冒頭の歌です。『古今集』の歌ですが、『百人一首』の方でお馴染みでしょう。あらためて調べると、11月に開催される「新嘗祭」(収穫祭)の際に奉納される「五節の舞」を見て歌ったものだとわかりました。そういう背景は別にしても、この歌はそれほど難しい言葉はないので、そのまま読んでもわかりやすい歌だと思います。
曲者は「天つ風」ぐらいでしょうか。この「つ」は、今の言葉でいう「の」に当たるもので、そのまま「天の風」と訳せばいい言葉です。
神社や『古事記』などがお好きな方なら「天つ神、国つ神」という言葉はお聞きになったことはあるでしょう。これはそれぞれ
- 天つ神:天の神 高天原におわします神々、高天原から降りてきた神々
- 国つ神:地の神 地上で現れた神々
という意味になります。『古事記』の最初の方には、天地開闢の際に現れた五柱の神々が登場しますが、「別天津神」と書かれていて「ことあまつかみ」と読みます。天つ神の中でも最初に登場する特別な神様ですね。
この「つ」は古語ですからなじみのない言葉だなあと思われるかもしれませんが、実はこの「つ」は、目の前にいつも見えているものでもあるのです。なんのことでしょう?
そう、「まつげ」です。
「まつげ」は「目津毛」、つまり「目の毛」なんです。「目」が「ま」とも読むのは「目の当たりにする(まのあたりにする)」などでお判りでしょう。「目」のすぐ近くにある毛なので「目の毛」ということで、「まつげ」というのです。この「つ」は「の」に変わることなく、「まつげ」全体で今に残ったのです。
言葉は変化するものですが、古代の人々と同じ言葉をそのまま使っている…と思うと「まつげ」という言葉がとても大切なものに感じてきます。
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