そもそもこの映画のメインテーマは何か。
これはもう「両性具有性」に他ならない。
第二次性徴中の主人公・三葉が大人の女性になることへの抗いとして、あまりにも強く男性のシンボルを希求する空想の中で瀧君という男性性を取り込んでしまう。
同じく思春期の男子である瀧が病的なまでに女性器に関心を持つ中で、いつの間にか空想の中で三葉という女性の肉体を我が物にする。
異性と合体したいという想いが肉体的にも精神的にも合一してしまい、精神的な異常をきたしながらも恍惚の世界を描ききることでそれは美しいものとして心に刻まれる。
2人、いや三葉でもあり瀧でもある1人の両性具有者である人物は、自らの肉体に触れることや裸体を鏡に映すことでは満足できなくなり、とうとう空想上のもう一つの性別を持った自分自身を探す旅に出る。
人格の崩壊という危機的状況を、むしろスクリーン上ではコミカルな雰囲気に装っているが、それを可能にするにもきちんとしたロジックが用意してある。
例えば、主人公・三葉のおばあちゃんのようにかつて同じようなエロスの世界に埋没したであろう人物が賢者の如く落ち着いた人間として自我を確立していることで、三葉の人格の解離が一過性のものであるという安心感を与えていることが大きいと思われる。
細かい部分で言えば「口噛み酒」などは三葉と瀧君の体液交換を神事として象徴的に扱うことでエロスの匂いをうまく消しながら、それでも観客の心の中には理由の分からない衝動をかきたてている。
実際それは「もっと観たい」「もっと知りたい」「もっと理解したい」という欲求として間接的でありながらも力強い勢いで本能に訴えかけてくる。
image by: 映画「君の名は。」公式HP
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著者/中西康介(心理学者)
「相手の歴史を聴く」そういう聴き方をなるべく専門用語を使わずに紹介しています。相手の話に本当の意味で「共感」できた時もはや何の理論も技法も必要なくなります。サイドメニューとして時事ネタ・芸能・ビジネス・スポーツなどからも「対人関係に活かせる心理学」をお伝えします。
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