【書評】子供でも手は抜かない。松岡修造に学ぶ「一流の育て方」

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どんなときにも手を抜かず全力でぶつかる姿勢が大人気の松岡修造さん。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、松岡氏のスポーツ教育の考え方をまとめた一冊から、ビジネスにも共通する、一流になりたいのなら絶対にしてはいけない行い・思考について紹介しています。

甘えが通用すると

最近読んだ本の内容からの話。

ウィンブルドンで日本男子としては62年ぶりのベスト8に輝くなど活躍したテニスプレイヤーで現在スポーツキャスターとして活躍する松岡修造氏は、ジュニア育成とテニス界発展のため、全国各地で小さな子供を対象にテニスクリニックを開催している。

小さな頃から運動神経が抜群で、小学校低学年の頃は水泳で同世代に選手の中では常にトップだった松岡氏は、テニスをやっていた兄の影響で10歳でテニスを始め、持ち前の運動神経で同世代には負けなかった。

しかし、そんな小学生時代の松岡修造氏がかつてデビスカップの日本代表だったテニス選手と対戦させてもらう機会があった時、スコアは6-0と、1ゲームも取れないという屈辱を初めて味わった。

元代表選手の大人相手に小学生では仕方のないことだが、当時小学生の松岡氏は悔しくて、試合が終わると、「もう1セットお願いします!」と、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら相手にお願いした。彼は「よし、もう1回相手になってやろう」と快く松岡氏の申し出を受けてくれて、そしてまたしても少しの手加減をすることもなく、悠々と6ゲームを奪っていった。

松岡修造氏は、この小学生時代の強烈な敗北の経験がその後の自分のテニス人生を変える大きなきっかけになった、と振り返る。あの悔しさを感じていなければ、テニスを続けなかったかもしれない、と思うほどだったという。

スポーツをしていく上での大きな経験は、達成感や勝利だけではなく、失敗することも敗北することも貴重な経験である。だから松岡修造氏は今、全国のテニスクリニックで、例え相手が4歳、5歳の子供であっても、とことんまで真剣に向き合い、遠慮はしない、絶対にわざと負けたりはしないという。

小さな子ども向けのテニスクリニックでは、みんなの前で松岡氏とのラリーが15回続いたら帽子やラケットをあげるというご褒美を用意する。子どもたちはご褒美欲しさにそれはそれは張り切るが、せっかくいい調子だったのに最後の最後、15回目のラリーで失敗してしまうことがある。4歳、5歳だから悔しさのあまり、たいていの子が大泣きする。

それを見ている子供のお母さんやギャラリーからは「子ども相手に厳しすぎる」「拾いやすいボールを打って成功させてあげること、子供に元気を出させてあげることが大事ではないのか」という声も挙がる。しかし、松岡修造氏はそうは思っておらず、むしろ「ほら、次が15回目だぞ!」とわざと子どもたちにプレッシャーを与えており、それで緊張して失敗する子どもたちも多くいる。

失敗の経験は決して悪いことではない。みんなの見ている前での悔しい思いは、なかなか体験する機会のない貴重なものであり、本人たちも、帽子がもらえなかったことではなく、目の前でつかみかけた目標を達成できなかったこと、それが悔しくて泣いているのだろう。

この悔しくて悔しくてしょうがない体験を消化できれば、次にチャレンジする時は絶対成功させるぞと思い、なぜうまくいかなかったのかを自分なりに考え、それがジャンプアップの原動力になるはずだ。

反対するお母さんたちが言うように、大人が手を抜いてご褒美をあげてしまうのはかえってもったいないことだ、と、松岡修造氏は述べている。

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