インド一人勝ちに焦る中露。日本はどの国と手を結ぶべきか?

 

ビジョンも異なる

ここまでは、「具体的な問題」に関する対立点でした。しかし、もっとも大切な「ビジョンでも相違が生じています

BRICSの方向性を巡る各国の思惑の違いも露呈している。

 

ロシアのプーチン大統領は訪印前、「BRICSは多極的な世界の構築へ向けたカギとなる」と述べた。米国主導の国際体制を批判してきたプーチン氏がBRICSの意義を改めて強調した形だ。

 

これに対し、インドはBRICSを経済的利益をもたらす協力機構とすることに主眼を置く。安全保障では日米などと連携強化を進め、西側との対決姿勢を示すことには否定的だ。モディ首相は開幕前、「経済協力と人的交流の強化を重視している」と強調した。ブラジルのセーラ外相も6月、欧米との関係強化に転じる姿勢を示している。
(同上)

プーチン・ロシアは、BRICSを、「反米一極世界」「多極世界」をつくる「カギ」にしたい。ところがインドは、「BRICSは、ただの経済協力機構だ」という。なぜだかわかりますね。インド最大の脅威は中国である。中国と対抗するためには、アメリカそして日本の協力が必要だからです。

そしてBRICSは、インドの一人勝ち

5カ国は元々経済が好調という一点で結びついたが、インドは高成長を維持するが中国は成長が鈍化。ロシア、ブラジルはマイナス成長で南アも低迷している。
(同上)

BRICSでは、インドが一人勝ち状態」であると。参考までに2015年のGDP成長率を見ると、

  • ブラジル:マイナス3.85%
  • ロシア:マイナス3.75%
  • インド:7.34%
  • 中国:6.9%(しかし、信じている人はいない。高橋洋一先生はマイナス3%と断言)
  • 南アフリカ1.28%

これ、「クレムリン・メソッド」で予測したとおりです。日本は、アメリカとの同盟を堅持しながら、インドとの関係をますます強固にしていかなければならない

アメリカとインド。この二国は、日本外交二本の柱。アメリカは、過去と現在の同盟。インドとは、未来を切り拓くための同盟関係を築いていなければならない。

インド防衛研究分析研究所のナチケート・カドキワラ氏は「米経済が低迷した08年ごろは「次はBRICSの時代」と言われたが、BRICSの役割には疑問が突きつけられている。各国の(思惑の)差異がBRICSの限界を示している」と論評。BRICSは岐路に立たされている。
(同上)

「BRICSは岐路に立たされている」そうです。

最後にまとめておきましょう。BRICS、さまざまな対立があり、大変なようです。

  • シリア問題、中印は、欧米との対立を強めるロシアを支持せず
  • 南シナ海問題、インドは、中国の立場を支持せず
  • テロ問題、中ロは、反パキスタンのインドの立場を支持せず
  • ビジョン、インドは、ロシアの「BRICSは多極世界つくりのカギ」とする考えを支持せず

こう見ると、中ロは、BRICSを「反米の砦」にしたい。しかし、インドは、BRICSを、「経済協力(金儲け)のツール」として考えており、「反米組織にしたくない」というのが対立の根本にあるようです。

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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