真田丸『第44話』裏解説。今も不明、「真田丸」の形に2つの説アリ

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は、幸村が大坂城の平野口に構築した出丸「真田丸」の本当の形について。今まで研究者などが発表した説はいくつもありましたが、なかでも有力なのが「巨大な丸馬出のような形」という説と、「直線的な長方形に近い形」という2つの説。ドラマ『真田丸』の軍事考証を担当する西股総生さんは、どちらの説を有力視しているのでしょうか?

今回のワンポイント解説(11月6日)

大坂冬の陣で真田幸村(信繁)が築いた出丸は、どのような形をしていたのだろう。真田丸は、冬の陣の直後に徳川軍によって破壊されて埋められてしまい、現在はすっかり市街地になっている。

そこで、これまでも、いろいろな研究者たちが、真田丸の形を推測してきた。比較的多かったのが、巨大な丸馬出のような形という説。これは、大坂の陣の様子を描いた絵図類に、半円形の出丸として描かれているものが多かったからだ。ただし、半円形ではない形に描いた絵図もある。

髙田徹氏は、この点に着目して、絵図に描かれた真田丸の形はいずれもデフォルメされていて、そのまま復元の根拠には為しえないことを指摘し、真田丸の位置を現在の明星学園グラウンド一帯に比定した(「豊臣期大坂城外郭に関する一考察」~『戦乱の空間』7 号 2008)。

最近になって、真田丸は直線的な形だったという説を提起したのが、坂井尚登氏だ。国土地理院に勤めている坂井氏は、第2次大戦直後に米軍が撮影した航空写真などをもとに、真田丸推定地付近の旧地形を丹念に復元し、長方形に近い形と判定した(「大坂城真田丸」~『城郭史研究』34 号 2015)。

地図のプロである坂井氏の地形復元は、たしかに説得力がある。ただし坂井説は、終戦直後の地形が江戸時代初期と大きく変わっていないことが前提だ。江戸時代から近代にかけて、耕地化や市街地化によって、真田丸一帯の地形が大きく直線的に改変されていたとしたら、この説は成り立たない。私見を述べるなら、真田丸のような土造りの臨時築城は、地形に逆らわずに進める方が効率がよい。だとしたら、きれいな直線にはならないように思う

千田嘉博氏は、『浅野文庫』所収の絵図などを元に、微地形や地中探査レーダーのデータなども加味した復元案を提起している(『真田丸の謎』NHK 出版 2015 など)。ただし、『浅野文庫』の絵図は、曲輪内に寺が描かれていることからもわかるように、真田丸が徹底的に壊され、埋められて、町場や畑となりつつある状態を描いたもの。大阪市歴史博物館の大澤研一氏と松尾信裕氏が検証されたとおり、『浅野文庫を復元の根拠とするには限界がある(「真田丸」について~『2016 年 NHK 大河ドラマ特別展・真田丸』2016)。

要するに、いろいろな人がいろいろな主張をしているが決定打に欠けるという意味では「全部こんな感じ」。真田丸の実像は相変わらず、おぼろ気なままだ。それはそうでしょう。だって、400年も前に短期間だけ存在し、徹底的に壊され、埋められてしまったんだもの。では、ドラマに登場する真田丸がなぜあのような形に設定されたのか、知りたい方はこちら…↓

◇12 月 23 日(金) トークイベント「信繁と幸村の2016 年をふり返る
第 1 部「今こそ語りたい第2次上田合戦と大坂の陣」…西股総生

第 2 部「サブカルで楽しむ歴史とドラマ」…西股総生・みかめゆきよみ・磯部深雪

日時 :12月23日(金) 14:00~15:00/15:30~17:00

場所 : 新宿クラブツーリズム(西新宿駅前・新宿アイランドウィングビル)

コース番号 
第1部 C2021-912 入場料 1,000 円 

第2部 C2022-990 入場料 500 円

(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

出丸の形は諸説あるけれど、いろいろあっていいじゃない、真田だもの。(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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★イベント情報★

◎11月19日(土)16 時〜神保町書泉グランデにてトークイベント開催!

『マンガ&スマホで楽しむエンタメ東国戦国史!』by. 西股総生(アシスタント・いなもとかおり)

場所:神保町書泉グランデ(7 Fイベントスペース)

参加費 500 円

西股総生先生による、500 円(参加券代)で楽しめる東国戦国史☆ 新作お城コンテンツのお披露目も!! ここでしか手に入らない小冊子も企画中!

※参加希望者はできるだけ、書泉グランデの方に予約をお願いします(03-3295-0011)

詳細はこちら

◎12月17日(土)新府城&谷戸城(山梨県)~クラブツーリズム日帰りバスツアー 新府城から真田丸を考える!

新府城は『真田丸』第1回の舞台。谷戸城は、天正壬午の乱における北条軍の野戦築城と考えら れる城。二つの城を歩きながら、幸村が真田丸築城に込めた思いと秘密を解き明かします。

旅行代金 15,500 円(昼食付)

コース番号 03337-098 でお問い合わせ下さい。

 

◎1月15日(日) クラブツーリズム 小倉城(埼玉県)~日帰り現地集合・現地解散

土で造るか、石を積むか? その違いはどこにあるのか? 『真田丸』で山城に目覚めた皆さん、いっしょに考えてみませんか? 山歩きのできる靴と服装でご参加下さい。

旅行代金 5,500 円

コース番号 03339-098 でお問い合わせ下さい

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★『復元イラストで見る「東国の城」の進化と歴史』河出書房新社から発売中

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今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】






























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