株価対策に100兆円! 中国政府が天文学的なお金をつぎ込んだ理由

shutterstock_292880822
 

なぜ中国株は急激に上昇し、そして突然暴落したのか。そんな、今さら人に聞けない素朴な疑問は今日で解決しましょう。人気コンサルタントの吉田繁治さんが無料メルマガ『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』でその原因を詳述しています。

6月13日からの、中国の株価急落

昨年の8月から2.6倍に上がっていた中国の株価(上海総合)が、5,100ポイント付近を頂点に、3,500に急落しました(1か月で32%下落)。その後、政府の株価対策で18%戻して4,070です(今年7月24日)。PERでは17倍に戻しました。

政府の対策費は5兆元(100兆円)と、ロイターが報じています(7月23日)。一瞬、桁の間違いと思ったのですが、記事では5兆元です。リーマン危機の後(2009年)、GDPを15%増やした4兆元(80兆円)の対策より大きい。

古来、白髪三千丈とする国です。紫禁城に行ったとき、その圧倒的な規模から、この国では、あらゆることに漢詩に見える表現の誇大はあり得ると思ったのです。

仮に金額が1兆元(20兆円)であっても、対策金額の大きさの割に、戻りは500ポイント(10%)で大きくはない。2兆元(40兆円)の信用借りの売買で損をしている、個人の売りの勢いが、強いことを示します

上海の株価は、6月12日の頂点で5,133ポイント、上場している726社の合計での時価総額(株主価値)は、36.3兆元(726兆円)にも達していました(1元=20円換算)。

(注)上海総合指数は1990年に作られました。最初100でした。その後の25年間で平均株価は51倍(平均年率での上昇が17%)です。

同じ時期の日本の時価総額は1/2。総額では1989年の時価総額(600兆円)戻していますが、上場株数が2倍になっているので、1株の株価では1/2です。この時価総額は、投資家による企業価値の評価であり、人気投票です。

シンセン証券取引所には、1,714社が上場しています。時価総額は、26.1兆元(522兆円)でした。両方で62.4兆元(1248兆円)、1社平均の企業価値は5,100億円に達する高騰だったのです(2015年6月12日)。

  • 日本の時価総額(東証1部:602兆円:7月27日)の約2倍、
  • NY市場とナスダックを合計した、米国の時価総額($26兆:3120兆円:15年2月)の40%です。

瞬間的な損失額は、390兆円という巨額

30%下落すれば、374兆円の金融資産が失われます。中国では、投資家は8,900万人と言われます。日本では700万人ですから、人口10倍に対する割合では、あまり変わりません。

1人当たり420万円の損害です。中国の特徴は、個人投資家が市場の80%の売買を占めること、です(日本では、個人の所有比率は、ほぼ20%と少ない)。

大きな株価上昇は、2014年11月からでしたから、減ったという感覚の額は、1人当たりで300万円でしょう。北京の平均賃金は6万9,500元(2014年:139万円/年)です。損は年収の2.2年分です。

信用恐慌までにはならないが…

中国では、金融機関の株投資への参加が、売買シェアでは20%と少ない。持ち分も時価で250兆円程度(推計)と少ないため、サブプライム・ローンのデフォルトがデリバティブ証券全体に波及し、MBSやCDOの全面崩壊を招いた米国型の信用恐慌には、ならないでしょう。

(注)中国の国有企業の株の過半は、政府がもっています。中国は、外資を規制しています。海外からはB株しか売買できません。B株のシェアは2%と極めて少ない。A株は、国内専用です。

問題は住宅価格だが、2015年は回復してきた

今後、累積投資額が株よりはるかに大きい不動産の10%以上の下落が重なると、資産バブル崩壊の、信用恐慌になって行きます。

2015年1月の不動産は、70都市のうち68都市では、前年比平均5.1%の下落です(ブルムバーグ)。これは過去最大の下落幅でした。これが7%、10%と大きくなれば、ローン債権の不良化が起こり、危なくなります。

(注)15年6月では、政府の住宅対策により70都市のうち27都市が再び上昇し、34都市が下落中です。1年前に比べると、シンセンと北京を除く68都市が下落しています。2014年6月ころから、下落する都市が増えたのです。

共産主義から来た中国では、国有企業を含み、経済に対して政府の政策の占める割合が大きく、株価と地価にも、政府の対策がよく効きます

投資家8,900万人が、株価で受けた、年収の2.2年分の損害は、逆資産効果から、消費と住宅不況をもたらすスケールです。

中国政府が躍起になって株価を凍結し、2兆元(40兆円)の信用貸しで焦げ付きが出た証券会社に、不足資金を供給して、株価対策をとった理由がわかります。

>>6月13日からの急落が何を意味するのか?

print
いま読まれてます

  • 株価対策に100兆円! 中国政府が天文学的なお金をつぎ込んだ理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け