税金195億のムダ。戦略なき日本のスパコン開発を中島聡氏が批判

 

富士通やNECや日立に195億円ものお金を渡してスパコンを作ってもらっても、決して良いものは作れないと私は思います。コストパフォーマンスを考えれば、NVIDIA のGPUを使うしかありませんが、そんなハードウェアは誰でも作れてしまいます。独自のハードウェアを作るという選択肢もありますが、最終的に GPGPU なり FPGA として外販していくという企業戦略なしに作ったところで、それは単なる一発芸でしかないので、コストパフォーマンスはとても悪くなります。

問題は、日本の IT ベンダーはそれでも「売り上げさえ上がれば良い」という発想だし、霞が関の担当者は、「瞬間風速でも良いから世界一の座を取ることが出来れば良い」という考えなので、結局のところ、損をするのは税金を支払っている国民になります。

本当に、日本の国際競争力を上げたいのであれば、Deep Learning に使われている GPU や FPGA が全て海外製品であることを憂うべきで、そこをなんとかするために税金を使うべきです。

私が担当者であれば、まずは「専用ハードウェアによる機械学習のアクセラレーション」というテーマの研究の提案を各大学にさせ、優秀な提案には一件当たり1千万程度の予算を与えて、設計・試作をしてもらいます。そして、その結果次第では、ベンチャー企業として独立するためのさらなる資金を与えるなり、既存の企業への技術移転をしてもらい、実用化を目指します。

CPU ではすっかり Intel、AMD、ARM に市場を持って行かれてしまった日本ですが、Deep Learning 向けの専用ハードウェアの戦いはまだ始まったばかりです。現時点では NVIDIA が圧倒的なリードを誇っていますが、ここはまだまだ進化の余地のある分野なので、諦めるのは早すぎます。

image by: Shutterstock

中島聡この著者の記事一覧

マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 週刊 Life is beautiful 』

【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 税金195億のムダ。戦略なき日本のスパコン開発を中島聡氏が批判
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け