1903年、第19回帝国会議での桂太郎の発言をめぐって、第21回、第22回の帝国議会で、台湾は植民地かどうかの大論争が起こりました。議論は帝国議会の枠を越え、あらゆる分野に波及し、憲法論争にまで発展したのです。
「法的」な見解としては、台湾は「臨時立法」の時限法としての「六三法」において、台湾の第8代総督であった田健治郎は「植民地」であることを否定しました。第18代総督の長谷川清海軍大将は、帝国議会の衆議院選挙を台湾でも開催することを予定し、台湾の内地化を促進しようとしていました。1945年、第19代総督の安藤利吉の代で終戦を迎え、その後の中国軍の進駐で台湾の日本時代は終わったのです。
そして、今なぜ「懐日」「慕日」映画がヒットしているのかということですが、台湾の50年に及ぶ日本統治時代は、日本時代を知らない若者層にとっても「よき時代」というイメージが強いからです。
戦後の日本は、戦前の「大日本帝国」を教育やマスメディアが率先して悪魔のように扱ってきたため、極悪非道なイメージが作られてしまいましたが、台湾では「明るい」イメージが強く残っています。
もちろん台湾でも国民党独裁時代は、日本時代を「非道」とする教育がなされてきました。しかし、日本時代を経験した人々から下の世代へと「真実」が受け継がれ、台湾人の日本に対する親愛の情が醸成されたのです。
台湾で日本時代が「昔は良かった」と憧れを持って言われることについては、政治的な解釈よりも台湾人の「日常生活」に視点を移すことで理解できるのです。
日本でもいま、憲法論議をはじめとして「戦後からの脱却」が重要なテーマとなっていますが、台湾でも蔡英文政権のもとで、戦後の国民党支配からの脱却、そして「ひとつの中国」からの脱却が進んでいるのです。
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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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