真田丸『第48話』解説。馬上筒は考証的にはアウトだけど許せるワケ

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は、大河ドラマにおける「考証」について。歴代の大河ドラマの中でも真田丸の時代考証はしっかりしていると評価されていますが、著者の西股さんは、「大河はエンターテイメントであって、考証はストーリーやキャラのリアリティを担保するためのもので、細かく気にせず素直に楽しめば良い」との持論を展開しています。

今回のワンポイント解説(12月4日)

今回登場した燧石式の馬上筒。もちろん、考証的にはアウトである(笑)。発火に火縄ではなく、 火打ち石(フリントロック)を用いる方式の銃がこの時期の日本に伝来していたとは到底考えられない。この件は、実はかなり以前からやり取りをしていて、考証上無理があることは制作側も承知している。承知した上で、作劇上の必要からあえて登場させるというわけだ。

僕は別に、それならそれで構わない、と思う。いや、これは決して皮肉で言っているわけではない。なぜなら、今までもこの解説に書いてきたとおり、『真田丸』はドラマであり、ドラマとはエンターテインメントであって、本質的にフィクションだからだ。ストーリーを作るのは三谷さん、番組を作るのはNHKの仕事であって、僕はそれをジャマするつもりはないし、その権利もない。

以前にナワバリンクのコラムにも書いたとおり(9月1日)、タイトルバックに登場する山城からして実在の城ではない。いろいろな映像を合成して作りだした架空の城であり、本来ならありえない要素を身にまとった姿をしている。つまり、視聴者をフィクションの世界にいざなうための、「伝説の勇者が住む天空の城」なのだ。

たしかに、今年の大河は考証がしっかりしている、と評されてはいる。でも、ドラマにおける考証とは、ストーリーやキャラのリアリティを担保するためのものであって、研究における実証や、ドキュメンタリーにおける裏付けとは、本質的に別物だ。だから、主人公も第1次上田合戦に参戦しているし、「幸村」を名乗っちゃってる。そこが面白くない、気になるという知的欲求水準の高い人は大河なんか観てないで専門書を読みましょう

さて、戦国軍事考証の立場から一つだけ指摘しておくと、燧石式の銃は、火打ち石を金属に打ち付けて発火させるから、火縄銃にくらべて発射時の衝撃が大きく、命中精度が落ちる。馬上筒なら銃身が短いから、余計に精度は落ちる。つまり、狙撃には向かない。ただ、火縄銃よりは馬上での取り回しに適している。そこが、幸村の活躍やストーリーとどう関わるのか。素直に楽しみたいと思う。(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

考証的にはアウトだけどドラマ的にはOKなフリントロック式馬上筒。マッチロック式(火縄銃)との違いは…!?(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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