どうも社説がおかしい。元旦から大迷走する大手新聞各紙の「展望」

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毎年、圧倒的なボリュームで届く元旦の新聞。今年も各社、それぞれの主張を展開してはいましたが…、「例年以上に酷い内容だった」と断ずるのはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』の著者でジャーナリストの高野孟さん。その理由を高野さんは「トランプ氏という異形の大統領登場に思い戸惑っているためでは」と推測し、各紙論説等の内容を詳しく紹介・分析しています。

トランプ政権登場で「自由主義」「民主主義」の行方は? ──思い惑うばかりの新聞各紙の元旦論調

元旦の新聞各紙がやたら分厚く重い割には読むところがないのはいつものことであるけれども、今年はなおさら酷くて、その最大原因はどうも、トランプという異形の米大統領の登場を目前にしてこれと一体どう付き合ったらいいのか、各紙の論説とも思い惑っていることにあるのではないか。

産経・読売は「反中国」でブッ飛び!

産経が前面に押し出しているのは、軍事記者の野口裕之による「新年に警告する/中国軍が宇宙制空権を奪取し、『真珠湾攻撃』を実行に移すXデーが迫っている」という長大な論説で、中国が宇宙から対米戦争を仕掛けようとしているという戯言である。

読売は空ではなくて海で、第1面トップで「中国、海底に命名攻勢/日本のEZZ周辺/権益拡大図る」という、ちょっと見には意味不明の見出しで、さらに第2面で「海洋権益、中国を警戒/機先制する体制整備を」の解説、第10面国際欄でも「日中、海底陣取り合戦」と、まあ満を持した一大キャンペーンという構えなのだが、中身はちょっと悲惨で、本部をモナコに置く「国際水路機関」の下部組織に「海底地形名称小委員会」というものがあり、そこに最近、中国が日本の周辺海域で中国語による命名申請を乱発していて「海洋権益拡大を加速させている」というのだが、記事中には日本も対抗して結構頑張っていることも紹介されていて、この何が問題なのかほとんど理解不能である。

読売の元旦社説は、トランプが特に中国に対してどう行動するかが不透明で、「尖閣諸島周辺などで中国の膨張圧力に直面している日本」としては「トランプ外交の行方に目を凝らさざるを得ない」という不安を述べている。それで、「中国は海底でもこんな邪悪な権益拡張意図を以て行動しているのだぞ」ということを、無知なトランプに教えてやろうというのがこの変な記事を元旦に持って来た狙いであるらしいことが、薄々推測される。

産経も読売も、今年はますます「中国ヘイト論調に突き進むのだろうと思わせる錯乱的な紙面作りである。

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