現役医師だから語れる、インフル患者が病院に行くことのリスク

 

イナビルの代価

病院に受診しないとイナビルを処方してもらえません。薬代に加えて、診察料、処方箋発行料などもかかります。また、インフルエンザウイルス迅速抗原検査を受けることも多いようですので、その代金もかかります。

若い人々が加入している通常の保険による診療でも合計金額のうち30パーセントは自己負担をしなければいけません。なので、数千円は窓口負担として支払わなくてはならないでしょう。そうすると、自然回復する病気なのに、平均して1日の病気の期間の短縮のために数千円の窓口負担をしていることになります。

受診は感染拡大のリスク

若くて健康な人々のインフルエンザに対する治療にはもう一つ問題があります。それは、病院に受診することによる二次的な感染拡大です。インフルエンザは流行性感冒ともいわれているくらいですからとても感染力が強いウイルスです。若くて健康な人々も含めてインフルエンザにかかった患者が皆イナビルを求めて医療機関に殺到するとどうなるでしょうか。そのような医療機関が感染拡大のセンターになるのです。

日常的に医療機関では肺や心臓、腎臓などの病気を持つ人や高齢者が通院しています。特に、外来の待合室には体力の弱い人々が集まっています。病気がひどくならないようにと通院している医療機関でインフルエンザに罹る人々が出ています

「発熱外来」を設置して、インフルエンザ疑いの患者さんを通常の外来通院患者さんと導線を分けている医療機関も多いですが、感染力の強いインフルエンザの患者さんと通院患者の接近を完全に分断することは困難です。

数年前に中東呼吸器ウイルスの肺炎が韓国で流行した事件がありました。中東で流行していたウイルス性肺炎を起こすものです。中東から韓国に入国した患者が韓国のある医療機関に受診した時に外来の待合室で感染を拡大させたのが発端でした。その後の感染拡大も、次々と感染した人々が医療機関に殺到して広がったのです。

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