リサイクル工場の裏でリサイクル品を焼却。ある若き技術者の苦悩
名古屋市は分別・リサイクルしている地域のゴミ処理費は1kg 80円、分別しないで一括して焼却している地域の処理費が25円です。当然のことで、「一括して市役所が集めてそのまま燃やす方法」に比べて、「数個に分け、一度、自治体に運び、整理し、業者に『リサイクル品』として売り渡し、その業者が焼却炉に運んで燃やす方法」を比較すれば、分別・リサイクルする方が資源もお金もかかり、その分だけ環境を汚すことは明らかです。
ウソはウソを呼び、愛知で万博があったときNHKは「愛知万博のゴミはすべて分別され有効にリサイクルされている」と朝7時のニュースで放送しました。ところが筆者が調べてみると、分別されたゴミはすべて一社か数社の業者に渡され、そのまま焼却場に直行していたのです。そこで筆者がNHKに何回も質問したのですが、「記者に連絡させる」と言われて、その後一切、連絡はありませんでした。
分別・リサイクルを止めると、
- 家庭では分別の手間が不要になり、ゴミの収集も簡単になる。
- 有料ゴミ袋など、余計は費用がかからず、段ボールにゴミを入れても捨てられる。
- 自治体のゴミ関係の職員の数を減らせる。
- 税金が安くなる。
- 家電製品もまとめて自治体に渡すことができる。
- 大型ゴミを分ける必要は無く、ある程度、砕くことができれば家庭からも出せる。
- 日本全体で使用する資源が減るので、景気が良くなる。
- 資源の消費量が減るので、資源の節約になる。
ということになります。そして倫理的(道徳的)には、
- 主婦や老人は暇だからやらせれば良いなどということを言わせない。
- 環境を守る負担を家庭にかぶせて、自治体は無傷、業者が儲かるシステムが終わる。
- 本当に環境を大切にする政策がスタートできる。
などが起こるでしょう。
筆者が『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』という本を執筆したきっかけは、名古屋大学工学部を卒業した技術者が筆者を訪れ、「先生、私はウソをつくために勉強したのではありません」と言った言葉が忘れられなかったからです。彼はある「リサイクル工場」に勤務していたのですが、分別されたものを引き受け「リサイクル証明書」を出し、工場の裏で焼却していたのです。そんなことを若者にさせる社会は許せませんでした。
今でも、分別したものの大半を焼却しているのは多くの人が知っています。そんなことを続けていたら日本は没落するでしょう。
image by: Shutterstock.com
著者/武田邦彦
東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。メルマガで、原発や環境問題を中心にテレビでは言えない“真実”を発信中。
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