「海賊とよばれた男」の子孫が反乱。出光の泥沼合併騒動に新展開

 

先日掲載の記事「出光の『お家騒動』出口見えず。なぜ創業家と経営側で対立するのか?」でもお伝えした、「出光興産」で勃発した「昭和シェル石油」との合併を巡るお家騒動。昨年12月に創業者・出光佐三をモデルにした映画『海賊とよばれた男』が奇しくも公開された出光ですが、あの騒動はどうなったのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、合併に向けて一歩前進したものの、「一筋縄ではいかない今後の展望」について占っています。

出光の昭和シェル株取得で創業家はどう動くのか

佐藤昌司です。2016年12月19日、公正取引委員会が一つの決定を下したことをご存知でしょうか。出光興産による昭和シェル石油の株式取得を承認したのです。これを受けて出光は同日、ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)から昭和シェル株31.3%を取得しました。当初は33.24%を取得する予定でしたが、31.3%に落ち着きました。合併に向けて動き出した形です。年が明け、新たな動きが出る可能性があります。今後の予想される動きを整理してみました。

今回、出光による昭和シェル株の取得は、3分の1を超えない31.3%に抑えることで株式公開買付け(TOB)を回避しました。TOBの場合、出光は形式的特別関係者である創業家の保有株式数を合わせて報告する必要があります。しかし、創業家は保有株式数の情報を出光に提供していません。そのため、創業家の保有株式数が加味されていない事実と異なる保有株式数を記載して公開買付届出書を提出することは、金融商品取引法に抵触すると主張しています。3分の1を超えない範囲での取得はこの理由によるものと思われます。

しかし、創業家はそれでも問題があると以前から指摘しています。創業家は、昭和シェルに出資しているサウジアラムコ社が出光の実質的特別関係者に該当するとし、相対で取得するには、サウジアラムコを控除した約18%まで減らす必要があると主張しています。創業家はブルームバーグ社の報道から、昭和シェル株の取得の前に出光とサウジアラムコが接触・協議したため、サウジアラムコが出光の実質的特別関係者に該当すると主張しています。

サウジアラムコは昭和シェル株の約15%を保有しています。TOBの義務が生じる3分の1超の割合から15%を差し引いた18%まででないとTOBの必要があるとの主張です。31.3%の取得は18%を越えることになります。創業家は展開次第で訴訟を起こす可能性があります。訴訟の構えを見せて牽制している形です。

また、2016年12月7日付日本経済新聞は、「8%超の株式を信託銀行に預けることで議決権ベースの出資比率を25%未満に抑える方向」と報じました。出光が取得した昭和シェル株の一部を信託銀行に預託することで25%未満に抑え、出光と昭和シェルが相互に出資できる形にして合併に向けた提携を進める意図のようです。

これに対しても創業家は反発しています。代理人の弁護士は信託銀行への預託を「脱法行為」と断じ、「このような信託は、まっとうな信託銀行であれば、受託しない」と主張しています。また、25%であれば18%を超えTOBの必要があるとも主張しています。

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