ええっと、こう見えて「絵」なんです。リアルを追求する5人の芸術家

2017.01.26
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リアリズム(写実主義)は古代ギリシャの時代から多くの芸術家が目指してきたもので、1960年代後期から70年代にかけては高度な写実絵画が人気絶頂となり、フォトリアリズムやハイパーリアリズム(あるいは、スーパーリアリズム)と呼ばれる世界が生まれました。今回、写真のような絵を描く、気鋭の5人のアーティストのお話を聞きました。彼らが生み出す作品のクオリティの高さは脱帽モノ!これらがすべてキャンバスや紙に書かれたものだと信じられますか?

都市のカオスをダイナミックに描く/ Nathan Walsh

ニューヨークを描いた『NYC 6am 』(2014)

雨に濡れる都会を切り取った、アスファルトに映る濡れた光の表現が印象的なこちらの作品を手がけたのは、UK出身・在住のNathan Walshさん。

「この12年間、私のすべての作品は”都市景観“に関係しています。視覚文化的によく知らない都市を訪れることが好きなんです。これによって、予測ができない成果に導くんです。都市には魅了されっぱなしです。労力をかける価値があるものを描くという行為を通じて、都会生活のカオスを永遠のものにする可能性がそこにはあるんです」と話します。

シカゴの街角『Chicago in the rain』

今回、Nathanさんにどのようにこの構図が生まれるのかを伺ったところ、「訪れた都市を当てもなく歩き回り、都市特有のカオスや独特の雰囲気を感じ取ります。それをスケッチブックにサムネイルを書きとめる。同時に、たくさんの場所を写真に残します。それから、スタジオに戻ってポストカード大の情景からイメージを膨らませて、フルスケールの絵にするというプロセスを取っている」という答えが。

『23 Skidoo』(2013年)

実際に旅先からUKに戻ると、たくさん撮り溜めた写真をふるいにかけ、作品になりそうなものを選び、ポストカードサイズの絵のシリーズを作ります。そして、それを壁に貼り、ある期間を一緒に過ごしてみて、その中からダイナミックなフルスケールの絵をつくるために最も視覚的なポテンシャルを持っているものを選ぶんだそう。

図面はフリーハンドで引いていきます。イメージの機械的な伝達を否定することで、ゼロから各対象物を構築するそう。規模の大きい絵だと、これに1ヶ月もかかるとか。下書きこそが、ある意味、最もクリエイティブな部分だそうです。その後、油絵で色味をつけていきます。

Nathanさんの作業風景。レンズの歪みまで忠実に絵が描く

「もともと、フルタイムでアーティストになるっていうことを決心したという意識はなかったんです。でも、絵が上手くなりたいという欲望はありましたね」と話すNathanさん。

「たくさんのアーティストが、何度も同じことを繰り返すという発想で作品をつくるという成功の方程式をもっているけど、それは僕にとっては全然魅力的じゃなかったんだ。代わりにどうすれば、とんでもない発想が爆発するか、視覚的な問題に関してエレガントな解決方法を探しだせるか、といったことがエキサイトだと思いました」。

そんなNathanさん、今回特別に未公開の最新作を日本の読者に見て欲しいとのこと、編集部に写真を送ってくれました。
それがこちらです!

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『Catching Fire’ 53 x 108 inches oil on linen』 / image courtesy of Bernarducci Meisel Gallery NYC

 

パワーが溢れるニューヨークという街のダイナミックさが、この絵から伝わってきますね!

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Nathan Walsh
1972年UK生まれ。現在もUK在住。大学・大学院でアート専攻し、デッサンや油絵、版画、タイポグラフィーなどを学ぶ。ニューヨークやパリなどの世界樹の大都市を緻密に描くアーティスト。
Nathan Walshさんの公式サイト / Instagram

 

 

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