SONYも脱帽。先見の明で8ミリビデオ時代を制したスゴ腕の町工場

 

「下請け」ではなく「パートナー」

日本の大企業は、中小企業を「下請け」として見下す事が多いが、欧米企業は違うどんなに小さな企業でも一流の技術には敬意を払う。ドイツの自動車部品メーカーから特殊な金型と専用成型機3台の注文がきた。完成すると、先方の社員に設備の使い方を指導して欲しい、との依頼があった。

一日の指導料はいくらか、という問い合わせのメールがあったので、さんざん迷ったあげく、吹っかけられるだけ吹っかけてしまえと、「一日5万円でいかがですか?」と返事をした。日本では指導してもお金をくれた事がないのである。翌日、返事が来て、「最初の取引だからそんなにサービスしてくださるのか? 次回からはもっと要求していただいて結構だ」とあった。先方は1日5万円とは安すぎると驚いたのである。

旅費も先方持ちで、飛行機はビジネス・クラス、ホテルも現地の5つ星クラスの最高級ということだった。松浦社長はそこまでしてくれなくても良いと先方に言い、ランクを落として浮いた費用でもう一人専門家を追加派遣してやったら、先方は大喜びだった。

このドイツの部品メーカーの社長と副社長が、来日して樹研を訪れて、こう言った。

実は、ヨーロッパの型屋とは全部縁を切ることとした。ついては御社とだけ取引をしたい。納期と値段についてはどこまでも相談に乗るから、どんなことがあっても、うちの仕事を受けてくれ。うちの仕事だけは断らないでくれ。

さらに「樹研工業はうちのパートナーだと言ってもいいか」とまで聞くので、松浦社長も感激した。一流技術があれば企業の大きさなど関係ない一流のパートナーとして扱ってくれるのである。

小さな町工場で働く工業高校卒の元暴走族でも、世界を相手に堂々たるビジネスができる。日本人が古来から大切にしてきた職人の伝統が現代のハイテク社会でますます存在感を発揮しつつある。デフレもグローバル化も高齢化もどこ吹く風と、逞しく世界を闊歩する日本企業の明日の姿を樹研工業は示している。

文責:伊勢雅臣

image by: 樹研工業

 

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【著者】 伊勢雅臣 【発行周期】 週刊

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