現役医師が語る、福島と韓国で甲状腺がん患者が急増した真の理由

 

ほとんど死亡しないがん

甲状腺がんの異常増加の大部分は2センチ未満の小さながんでした。しかも病理診断的には乳頭腺がんというタイプのものです。このようなサイズのがんはほとんど症状を出しません。

しかも甲状腺の乳頭腺がんは死亡原因とならないがんという特徴があります。別の原因で亡くなられた人の全身を病理解剖すると、甲状腺の乳頭腺がんがよくみつかります。すなわち、甲状腺の乳頭腺がんは放置しても死ぬまで症状を出さないがんであることがほとんどなのです。

一方、甲状腺がんによる死亡率はどうでしようか。死亡率は変わっていませんでした。甲状腺がんがこれだけ増えたといっても、死亡率は変わらずですから、生死に関係しないがんをみつけていたということになります。

しかも、今回発表されたデータによると、甲状腺がんが見つかった人々では一般人と比較して生存期間が長かったということも判明しました。検診を受けるような人々はもともと健康意識が高いので、より健康長寿であることが原因とされています。

リンパ節転移でも死亡しないがん

また、今回の韓国の疫学研究結果では、さらに興味深い結果が判明しました。リンパ節転移をみた患者でも甲状腺がんで死亡することは非常に稀であることがわかったのです。これは、がん診療に関係する専門家にとっては理解し難い結果でした。しかしそれが事実。これまでの常識にとらわれずに医学的現象を受け入れることも必要なのです。

甲状腺がんの検診は通常、エコーと呼ばれる超音波検査で行われます。ほとんど健康な一般人を対象に大規模な検査を行うのはかなりの 高額な費用がかかります。

また、甲状腺がんの診断では、その結節に針を刺して細胞を吸引し細胞診という顕微鏡検査を行うことによってなされます。出血などの合併症のリスクもある侵襲的な検査です。

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