過剰診断の認知が広がる
このような背景から韓国では2015年ごろから甲状腺がん検診への見直しが徐々に広がってきています。早期発見早期治療というコンセプトは正しいこともあればそうでないこともあるということを皆が理解し始めました。これにより、直近のデータでは、甲状腺がんの罹患率が低下し始めました。
福島の東京電力原子力発電所事故のあと、周辺住民の甲状腺がん検診が定期的に実施されるようになりました。そこで甲状腺がんの発症が多数確認され問題になっています。放射線医学の専門家によると、その住民の被曝量からは発がんリスクは考えにくいということです。では、福島での甲状腺がん増加の原因は何か? それもやはり過剰診断です。検診を行うことが増加をもたらしているのです。
さて、韓国の医学会はこの事例から多くのことを学んだようでした。過剰診断がこれほど明確に目の前に現れたことで、今後の医療政策に重要な教訓として残していくべきと感じたようです。
実際、韓国の直近におけるChoosing wiselyキャンペーンに対する関心はかなり高くなっております。私自身も2015年と2016年の2年連続でソウルに招聘され、日本と世界におけるChoosing wiselyキャンペーンの現状について講演する機会を持つことができました。
韓国の様々な医学学会から多くの医師や研究者が集まり、活発な議論の機会を持つこともできました。日韓の過剰診断の領域での合同研究が今後展開されることが期待されます。
文献
Davies L. Overdiagnosis of thyroid cancer. BMJ. 2016 Nov 30;355:i6312.
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