科学も証明。日本の漢字教育が育む、子供の心と高い知能指数

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外国の方からよく「難易度が高い」と言われる日本語。その理由として漢字、ひらがな、カタカナの使い分けが挙げられますが、今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』で紹介されている小学校教師の石井勲氏は、あることをきっかけに「漢字」に子どもの能力を伸ばす不思議な力があることに気付き、「石井式漢字教育」を編み出したと言います。「幼児に漢字は難しい。まずはひらがなから」は誤りなのでしょうか。

子どもを伸ばす漢字教育

きっかけは偶然だった。小学校教師の石井勲氏が炬燵に入って「国語教育論」という本を読んでいた。そこに2歳の長男がよちよち歩いてきて、石井氏の膝の上に上がり込んできたので、氏は炬燵の上に本を伏せて置いた。

その時、この2歳の幼児が「国語教育論」の「という漢字を指してきょうと言ったのである。びっくりして、どうしてこんな難しい字が読めたんだろう、と考えていると、今度は隣の「の漢字を指していくと言った

石井氏が驚いて、奥さんに「この字を教えたのか?」と尋ねると、教えた覚えはないという。教えてもいないものが読めるわけはない、と思っていると、奥さんが「アッ! そう言えば一度だけ読んでやったことがある」と思い出した。奥さんは音楽の教師をしており、「教育音楽」という雑誌を定期購読していた。ある時、息子が雑誌のタイトルを指で押さえて、「これなあに?と聞くので一度だけ読んでやったような記憶がある、というのである。

そんなこともあるのか、と半信半疑ながら、ひょっとしたら、幼児にとって漢字はやさしいのかもしれない、と石井氏は思いついた。ひらがなは易しく漢字は難しい、幼児に教えるものではない、と思いこんでいたが、実はそうではないのかもしれな い。これが石井式漢字教育の始まりだった。

漢字学習で幼稚園児の知能が伸びた!

それから石井氏は昭和28年から15年にもわたって、小学校で漢字教育を実践してみた。当初は学年が上がるにつれて、子どもの学習能力が高まると信じ込んでいたが、実際に漢字を教えてみると、学年が下がるほど漢字を覚える能力が高いことが分かった。

そこで今度は1年生に教える漢字を増やしてみようと思った。当時の1年生の漢字の習得目標は30字ほどだったが、これを300字ほどに増やしてみると、子供たちは喜んでいくらでも吸収してしまう。それが500字になり、とうとう700字と、小学校6年間で覚える漢字の8割かたを覚えてしまった

ひっとしたら就学前の幼児は、もっと漢字を覚える力があるのかもしれない。そう思って昭和43年からは3年間かけて、幼稚園児に漢字を教えてみた。すると幼児の漢字学習能力はさらに高いということが分かってきた。同時に漢字学習を始めてからは幼児の知能指数が100から110になり、120になり、ついには130までになった。漢字には幼児の能力や知能を大きく伸ばす秘密の力があるのではないか、と石井氏は考えるようになった。

複雑でも覚えやすい漢字

どんな子どもでも3歳ぐらいで急速に母国語を身につけ、幼稚園では先生の話を理解し、自分の考えを伝えることができる。この時期に言葉と同時に漢字を学べば、海綿が水を吸収するように漢字を習得していく、というのが石井氏の発見だった。漢字は難しいから上級生にならなければ覚えられない、というのは、何の根拠もない迷信だったわけである。

同時に簡単なものほど覚えやすい、というのも、誤った思いこみであることが判明した。複雑でも覚える手がかりがある方が覚えやすい。たとえば「耳」は実際の耳の形を表したもので、そうと知れば、簡単に覚えられる。「みみ」とひらがなで書くと画数は少ないが、何のてがかりもないのでかえって覚えにくい。

石井氏はカルタ大の漢字カードで教える方法を考案した。「机」「椅子」「冷蔵庫」「花瓶」などと漢字でカードに書いて、実物に貼っておく。すると幼児は必ず「これ、なあに?」と聞いてくる。そこではじめて読み方を教える。ポイントは、遊び感覚で幼児の興味を引き出す形で行うこと、そして読み方のみを教え書かせないことである。漢字をまず意味と音を持つ記号として一緒に覚えさせるのである。

抽象化・概念化する能力を伸ばす

動物や自然など、漢字カードを貼れないものは、絵本を使う。幼児絵本のかな書きの上に、漢字を書いた紙を貼ってしまう。そして「鳩」「鴉」「鶏」など、なるべく具体的なものから教えていく。すると、これらの字には「鳥」という共通部分があることに気づく。幼児は「羽があって、嘴(くちばし)があって、足が2本ある」のが、「鳥」なのだな、と理解する。ここで始めて「鳥」という「概念」が理解できる。

これが分かると「鶯」や「鷲」など、知らない漢字を見ても、「鳥」の仲間だな、と推理できるようになる。こうして物事を概念化・抽象化する能力が養われる

またたとえば「右」、「左」など、抽象的な漢字は「ナ」が「手」、「口」は「くち」、「工」は「物差し」と教えてやれば、食べ物を口に入れる方の手が「右」、物差しを持つ方の手が「左」とすぐ覚えられる。そう言えば、筆者は小学校低学年の時、右と左の字がそっくりなので、どっちがどっちだか、なかなか覚えられなかった記憶があるが、こう教わっていたら瞬時に習得できていただろう。

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