消え行く24時間営業。なぜ深夜のファミレス需要は減ったのか?

 

電通に勤めていた高橋まつりさんの過労自殺が明るみに出たことで、世間の過重労働に対する厳しい視線に注目が集まるようになりました。高橋まつりさんのSNSには深夜労働が続いていたことが告白され、電通における深夜労働の実態が浮き彫りになりました。これを受けて、電通は残業を原則午後10時までとする社内ルールを定めました。世間の批判に抗しきれなかった形です。

飲食店での過重労働の問題は牛丼チェーン「すき家」が記憶に新しいところでしょう。2014年2月ごろから人手不足による閉店が相次ぐ騒ぎになり、深夜時間の営業を従業員1人に任せる「ワンオペと呼ばれる過酷な労働実態が問題視されるようになりました。

これを受けて、すき家を運営するゼンショーホールディングスは労働環境改善に関する第三者委員会を設置しました。同年7月31日に調査報告書が公表されています。

調査報告書には店舗での加重労働の実態が詳細に記されていました。「意欲も低下、慢性的人員不足でおかしくなりそうです」「正直言わせていただくと、労働環境かなり悪すぎです」「ハードワーク、睡眠不足・ストレスで倒れた。車で事故が2回、体力の限界」 といった過酷な労働状況に対する従業員の悲痛な叫びを見ることができます。

こうした実態に世間は驚愕し、すき家のイメージは悪化し客離れにつながりました。調査報告書発表翌月の8月から翌年9月まで14カ月連続ですき家の客数(既存店)は前年割れとなるほどです。

ファミレスが深夜営業を縮小する理由は、近年の人手不足に対応する狙いもあります。飲食店での人手不足は深刻化しています。人材を確保するために、アルバイト・パートの時給の引き上げ、採用予算の増額、外国人や未経験者の採用といったことを行わざるを得ない状況になっています。

時給の引き上げや採用予算の増額による経費増大が経営の足かせになっています。また、24時間営業による人件費の負担も影響しています。例えば、すかいらーくの近年の人件費は上昇しています。2013年度から2015年度までの人件費は一貫して上昇しています。売上高人件費率も上昇傾向にあり、2013年度は32.2%、2014年度は32.5%、2015年度は33.1%と一貫して上昇しています。

一方、ロイヤルHDの直近7年間の売上高人件費率は減少しています。2009年度は29.8%でしたが、2010年度は28.8%、2011年度は28.8%、2012年度は28.2%、2013年度は27.4%、2014年度は27.0%、2015年度は26.8%です。減少傾向を示していることがわかります。

ロイヤルホストでは以前から営業時間の短縮を進めていました。そして、24時間営業を全店で終了させました。営業時間を短縮することで売上高人件費率を低減させることができています。もちろん他の要因の影響もありますが、営業時間の短縮が大きく貢献していることを否定できないでしょう。

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