トランプが「口撃」開始。現実味を増してきたEU崩壊のシナリオ

 

「反米同盟」としてのEU

第2次大戦終結から1991年のソ連崩壊までを「冷戦時代」と呼びます。別の言葉で、「米ソ二極時代」。アメリカとソ連、二つの極があった。

ソ連崩壊で、一つの極が消えた。そして、「アメリカ一極時代」がスタートしました。アメリカは90年代、まさに「一人勝ち」。その栄華は、「永遠に続く」と言う人もいました。

しかし、新世紀に入ると、ボロボロになってしまいます。一体何が起こったのでしょうか? アメリカ最大の「強さ」は、「ドルが基軸通貨(世界通貨)であること」です。これは、「強さ」であると同時に、「アキレス腱」でもある。「アメリカを潰すためには、ドルを基軸通貨の地位から転落させればいい!」。これは、反米支配者の間では、「一般常識」である。

1999年、「電子決済通貨」としての「ユーロ」が誕生しました。2000年9月、「裏世界史的大事件」が起こります。イラクのフセイン大統領が、「原油の決済通貨をドルからユーロにかえる!」と宣言した。そして、同年11月、実際にかえてしまった。

この動きをサポートしていたのが、フランスのシラク大統領でした。それまで、「世界の原油取引はすべて『ドル』で行うべし」という暗黙の決まりがあった。シラクは、フセイン・イラクを使ってそのシステムに穴をあけ、一気にユーロがドルに並ぶ基軸通貨になる可能性が見えてきた。

2002年、ユーロの「現金流通」が開始されました。アメリカは、「ドル防衛」に動きます。03年、ウソの理由でイラクを攻撃。同国原油の決済通貨をユーロから再びドルに戻すことに成功した。しかし、世界的に「ドル離れ」のトレンドを変えることはできなかった。ユーロは、対ドルで、ほぼ一貫して上がり続けていきました。

そして、08年9月、「リーマン・ショック」から「100年に1度の大不況」が起こった。これで、「アメリカ一極世界崩壊したのです。

アメリカ一極体制をつぶした黒幕

冷戦が終わり、アメリカ一極世界になった。この体制に不満だったのが欧州のエリートでした。冷戦時代は、「ソ連の脅威」から守ってもらうために、アメリカが必要だった。しかし、ソ連が崩壊し、最大の脅威が消滅したので、「もうアメリカの保護は必要ない!」となった。欧州エリートが考えた戦略は、以下のようなものでした。

  1. EUを拡大する(主に東欧を吸収する)ことで、経済規模、人口でアメリカを上回る「国家(?)」をつくる
  2. ユーロをつくり、広めることで、ドル基軸通貨体制に対抗していく

そして、それは着実に実行されていった。つまり、「アメリカの覇権をぶち壊したのはEUだ!」とも言える。その中核は、ドイツとフランスです。

そして、この二国、メルケル・オランド現政権の特徴は、「きわめて親中国」である。両国とも、2015年3月、イギリスの後を追って、ダッシュでAIIBに加盟しています。だから、トランプが、

「EUを潰してしまおう!」
「欧州は、NATOを通して軍事支配しよう!」

と考えたとしても、まったく不思議ではありません。私たちは、「欧米」といいますが、実は「ドロドロ」なのです。そういう意味で、トゥスクさんの懸念は正しい」と言えるでしょう。

考えてみてください。トランプさんは、「アメリカを再び偉大な国する!」と言っている。もしEUが崩壊しユーロも消滅すれば? ドルは、再び世界唯一の基軸通貨になり、アメリカは偉大になるのでは? こういう発想が出てくるのは、当然でしょう。

print
いま読まれてます

  • トランプが「口撃」開始。現実味を増してきたEU崩壊のシナリオ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け