次の敵は石原慎太郎。「小池劇場」第二シーズンの絶妙なシナリオ

arata20170209
 

豊洲新市場問題を巡り、石原元都知事の責任を追求する姿勢を明らかにした小池東京都知事。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんはこの動きに対して「もちろんいいことだ」と評価する一方で、石原氏が豊洲のすべてを任せていたという当時の副知事からこれまで一切ヒアリングしてこなかった小池知事の姿勢を疑問視、その正体について「本当に都民を第一に考える政治家なのかよくわからない」としています。

小池勧善懲悪劇の悪役・石原の狼狽とその腹心の嘆き節

東京都の小池知事が、豊洲問題の元凶である石原慎太郎の責任を問う動きをしている。もちろん、いいことだ。

豊洲市場について「汚染された土地を購入したのは違法だ」と、都に対し「石原元知事に土地代金約578億円を請求すること」を求めた住民訴訟。小池知事は、これまで石原氏に賠償責任はないと言い張ってきた都の方針をあっさり変え、石原追及の姿勢に転じた

さすがというべきか。まず小池知事は公開ヒアリングを自尊心の高い石原氏に求めた。予想通り拒否されると、今度は質問状を送りつけた。中身のない書面が返ってきた。これも想定通りだ。

小池氏は決して密室で石原氏に会うようなことはしない。それでは「勧善懲悪劇にならないからだ。手にした石原氏の回答書を定例会見の場で紹介するだけで、ひとまず十分だった。

自分は聞いていない、記憶にない、分からない、覚えていない、といったような回答でした。都合の悪いことを、むしろ今、私どもにお伝えいただかないと、明確な答えにつながっていかないんじゃないか。作家生活、何よりも都知事を続けてこられた御功績を無になさらないようにしていただきたいと、強く思っております。

そして、いよいよ繰り出した奥の手が、訴訟対応の変更だ。それまでの都側の3人の弁護士を解任し、6人の新しい弁護士に総入れ替えした。その発表のさい、原告側から石原氏へ証人尋問の要求があることについて記者から考えを問われ、小池氏は答えた。

どう対応されるのかは石原さんの判断ですが、(土地購入に関して)どのような決断をしてきたのかは明確にするべきです。今まで逃げている印象があるのは不満がおありでしょうし、石原さんらしくないのでは。

それにしても、訴訟対応の方針を大転換したタイミングは、絶妙というほかない。

東京都議会選挙は6月23日告示、7月2日投開票である。これを見据えて石原氏を追い詰めていくというシナリオは抜群のアイデアだ。

小池劇場の新しい場面を仕立てようという選挙戦略が透けて見える。大悪人を退治する正義の女剣士。第一幕では内田茂氏ら都議会自民党の面々や、自民党都連の幹部たちが、小池氏にぶった切られる敵役だった。

これから夏に向かうシーンで悪役となるのは、もちろん石原慎太郎だ。小池氏は裁判をうまく利用し、弁護団を総入れ替えして、舞台をしつらえた。

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