騙されるな日本。いつから米国は「信用できる国」になったのか

kitano20170213
 

10日に行われた日米首脳会談では、懸念されていたトランプ大統領からの無理な要求などもなく、日本のマスコミは連日「大成功だった」と報じています。しかしながら、政治をビジネスの一環として捉えるトランプ大統領をどこまで信用していいのかは誰もが疑問に思うところ。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に詳しい北野幸伯さんは、トランプ大統領という人物をどのように見、そしてどのような懸念を抱いているのでしょうか?

トランプ大統領誕生で、アメリカは【信用できる国】になったのか?

日本におけるトランプ新大統領の評価は、真っ二つにわかれているようです。公約どおり、「TPP脱退」「壁建設推進」「イスラム諸国からの入国制限」などを次々と行っている。それで、既存のマスコミは、概して「反トランプ」のようです(公約を実行して、反対されるのも、悲しいですが。普通は、公約を実行しないで、批判されるものです)。これは、欧米メディアも同じです(「制裁解除」を期待するロシアメディアは、トランプ支持です)。

その一方で、「グローバリズムと考える保守派の皆さんは、「トランプ支持が多い。マティス国防長官も、ティラーソン国務長官も、早速「尖閣は、日米安保の適用範囲」と断言した。それで、「トランプは、中国から日本を守ってくれる!」と期待する人も増えている。

そんな中、読者さんから、こんな質問をいただきました。

「トランプは、信用できる男なのでしょうか?」
「トランプを信頼していいのでしょうか?」

皆さんだったら、どう答えますか? 私は今回3つの観点からお話ししたいと思います。

  1. トランプの「アメリカ・ファースト」(アメリカ第1主義)は、「ジャパン・ファースト」ではない!
  2. アメリカは、同盟国をコロコロかえてきた。
  3. アメリカは、法的にみて「正義の味方」ではない。

「アメリカ・ファースト」は「ジャパン・ファースト」ではない

まず、1.トランプの「アメリカ・ファースト」(アメリカ第1主義)は、「ジャパン・ファースト」ではない!

トランプさん、就任演説でも言っていました。「アメリカ・ファースト!」。日本では、「アメリカ第1主義」と訳されています。彼によると、アメリカはこれまで、「他国を助け過ぎていた」。それで、「アメリカは、弱く、貧しくなってしまった」。これからは、「アメリカの国益最優先でいく!」。こう宣言している。

これ、わかりやすく、会社に置き換えてみましょう。O社長は、会社の利益より、社会への貢献を優先させてきた。そしたら、経営が傾いてしまった。それで後任のT社長は、「儲け第1主義でいくぞ!」と宣言した。「アメリカ第1主義とはそういう意味です。

となると、トランプさんが日本に優しいのは、当然「アメリカの利益になるという見通しがあるから」でしょう。何かというと、対中国で仲間を増やす必要がある。日本はGDP世界3位の大国。防衛費はGDPの1%なので、まだまだ増やせる余地がある。経済でいえば、日本はアメリカ国債保有で、常に世界1~2位である。アメリカは、対日貿易で年間7兆7,000億円の赤字。「これを是正しろ!」と言えば、(中国と違い)何らかのアクションを起こしてくれる可能性が高い。

というわけで、アメリカは現時点で日本を必要としている。だから優しいのですね。しかし、アメリカの事情が変わったら日本への態度も当然変わってくるでしょう。私たちは、以下の公式をいつも覚えておく必要があります。

● 国益 >>> リーダーの個人的な感情

たとえばA社の社長さんと同業B社の社長さんは仲がいい。よく一緒にゴルフもするのです。ある時、超大型案件の入札情報が入ってきた。A社はB社に勝つために、同業他社に勝つために全力を尽くすでしょう。また、B社は、A社と同業他社に勝つために全力を尽くすでしょう。A社社長とB社社長がゴルフ友達でも遠慮はしない。良い社長ならそうするべきです。

同じように、良い大統領、良い首相は、「国益のために戦う。つまり、トランプが「良い大統領」であれば、「アメリカのために戦う」。もしアメリカの国益と日本の国益が一致しなければ、遠慮なくアメリカを選ぶに違いない。その時、アメリカは得をし、日本は損をすることになる。

だから、「トランプさんは信用できるのでしょうか?」という質問の答えは、「意味がわかりません」です。トランプさんは、アメリカのために働いているので日本のために働く義務はないのです。つまり、アメリカの国益が変われば、日本への態度もすっかり変わるかもしれない。私たちは、いつもこの可能性を覚えておく必要があります。

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