日本は利用される。突然「一つの中国」を認めたトランプの思惑

 

だから中国を挑発してはいけない

2月11日号「騙されるな日本。いつから米国は「信用できる国」になったのか」で、こう書きました。

では、アメリカは、日本をどう利用する可能性があるのでしょうか?わかりやすいのは、「経済面」ですね。

 

「米国債をもっと買え!」
「貿易不均衡を解消しろ!アメリカ製品をもっと買え!」

 

これは、目に見えるので、ある面対処しやすい。しかし、問題は、「安保面」です。日本が直面する可能性のある最大の問題は、「アメリカが対中国で、日本をバックパッシングするかもしれない」ことでしょう。

 

「バックパッシング」(責任転嫁)とは、つまり「アメリカが勝つために、中国と日本を戦わせること」を意味します。どうやって?

 

リアリズムの大家ミアシャイマー教授は、その著書『大国政治の悲劇』の中で、「バックパッシングの方法」について触れています。4つ方法がある中で、もっとも「今の日米関係に当てはまる」と思われるのは、以下の方法です。

 

「4つ目は、バックパッサーが、バックキャッチャーの国力が上がるのを許すだけでなく、それをサポートまでしてしまう方法である」
(『大国政治の悲劇』227p)

 

意味わかりませんね。これはつまり、「アメリカが、日本の軍備増強をサポートする」という意味。なぜ?

 

「これによりバック・キャッチャーが侵略的な国家を封じ込めてくれれば、バック・パッサーにとって傍観者のままでいられる可能性が高まるからだ」
(同上)

 

言い換えると、「これにより日本が、侵略的な中国を封じ込めてくれれば、アメリカは傍観者のままでいられる可能性が高まるからだ」となります。日本が中国と戦ってくれれば、アメリカは、「楽ですわ」と。トランプ政権は今、このプロジェクトを始めているようにも見えます。

ここで、「バックパッシングの方法は4つある」とあります。その一つは、「日本を強化して中国と戦わせる」。もう一つの方法を、ミアシャイマー教授に教えていただきましょう。

一つ目が、侵略的な国の関心を常にバック・パッシングを「される側」、つまり「バック・キャッチャー」(責任転嫁を受ける側)の国の方に向かせるために、侵略的な国と良い外交関係を結ぶ、もしくは最低でも刺激するようなことはしない、というものである。
(『大国政治の悲劇』226p)

意味わかりません。わかりやすく変換してみましょう。

一つ目が、侵略的な国【=中国】の関心を常にバック・パッシングを「される側」【=日本】、つまり「バック・キャッチャー」(責任転嫁を受ける側)の国【=日本】の方に向かせるために、侵略的な国【=中国】と良い外交関係を結ぶ、もしくは最低でも刺激するようなことはしない、というものである。

簡単に言うと、アメリカは中国を打倒したい。しかし、自分の手は汚したくない。それで、日本を使って戦わせる。どうやって? アメリカは中国を刺激せず中国の憎悪を日本に向ける、と。

アメリカが日本を「バックパッシングしている」とどうすればはっきりわかるでしょうか?

アメリカが日本に、「俺たちがバックにいるから、どんどん中国を批判しても大丈夫だぜ!」と言う。その一方でアメリカが、中国と仲良くしている。これは、はっきりした「バックパッシング」の兆候です。ですから安倍総理は、「トランプ大統領は私の味方!と舞い上がって中国を挑発してはいけないのです。

リベラルの人がいつも言うように、アメリカは戦略どおり「はしごを外す」かもしれない。中国に関して日本はアメリカが嫉妬するほど接近してはいけない(例、キッシンジャーから「最悪の裏切り者!」と呼ばれた田中角栄さん。最近の例では、「私は人民解放軍の野戦軍司令官です!」と宣言した小沢一郎さん)。

その一方で、アメリカ抜きの「日中戦争」が起きてしまうほどに中国を挑発してはいけない。日本は、ずる賢い二つの大国とのバランスをとりながら、「米中覇権争奪戦の時代をサバイバルしていかなければならないのです。

私たちが頭の中で100万回唱えなければならないのは、「ABC」です。

A = Always
B = Be
C = Careful

総理、どうかアメリカに対しても中国に対しても、警戒を怠らず、なおかつ両国に対して穏やかであってください。

image by: 首相官邸

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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