【書評】嫁より早死にするつもりの男性が陥る老後の孤独地獄と罠

 

保証人が見つからないときはどうすればいいか、との質問に約6割の病院・介護施設が「成年後見人に保証を求める」と回答してきた。成年後見人とは認知症などにより本人の判断能力が落ちてきたときからの仕事である。本人が100歳超であろうとも、認知症が始まらないと後見人の仕事は始まらない。意味ないではないか。保証人がいないときはお断りということだろう。法律上は、病院や施設に入る際に保証人がいなくても問題はないのだが、実際には保証人要求があたりまえになっている。人質をとらないと事が進まないこんな悪習慣はどこからみてもおかしいが、これが罷り通っている。どうすればいいのか。

「ひとり」に群がる身元保証ビジネスがある。この20年間で100以上の民間事業者・法人が参入している。NPO法人りすシステム、NPO法人きずなの会、公益財団法人日本ライフ協会などが大手である。しかし、日本ライフ協会は高齢者委託金2.7億円を流用、公益認定を取り消されて2016年に破綻した。本来は行政でやるべきことを、法人が担う時代が来たといえなくもないが、これは人助けではなくビジネスである。「地獄の沙汰も金次第」ということわざを思い浮かべる。利用を考える人は、対象法人についてよほどの研究が必要である。

男は「老後ひとりぼっち」は関係ないと思っている。「俺は女房より先に死ぬからと思い込んでいるからである。頭の中には女房に先に死なれる発想はまったくない。男のひとり老後の知識と心構えがないと、多くは取り残され症候群に陥り、孤立してつらいことになる。男が「老後ひとりぼっち」を自分のこととして捉えて、保証人習慣をはじめとする、日本の福祉の問題点に声をあげないと何も変わらない。「男ひとりぼっち」と「女ひとりぼっち」は大きく違う。未亡人はいきいきとしている。妻を失った男からは、なにやら孤独死を思い浮かべてしまう。女性は経済力さえあれば怖いものは何もないらしい

18年後の2035年には、65歳以上のひとり暮らしは約770万人にふくれあがるという推計がある。「老後ひとりぼっち」は、男こそが真剣に自分のこととして考えなければならないテーマなのだ。次世代の人が生きやすいように、他者を頼らないでも生きられる社会に改革していく義務が、男にはあるとわたしは思う。この本の最終章は、「悲惨な『老後ひとりぼっち』にならないために─今から押さえておくべき20のこと」がある。ごく当たり前だったが。

編集長 柴田忠男

 
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