一方で、ソーシャル・ワークでは、新しい方向性が示されています。それが、「解決志向アプローチ」と言われるものです。「解決志向アプローチ」は、問題やその原因、改善すべき点を追求するのではなく、解決に役立つリソース=資源(能力、強さ、可能性等)に焦点を当て、それを有効に活用することにあります。事件から時間が経ちすぎてしまった場合は、こちらのアプローチを検討してみて下さい。
「何がいけないか」と考える代わりに、当事者が望む未来を手に入れるためには「何が必要なのか」「どうやればできるのか」を援助者と当事者が一緒に考えて解決を図っていきます。つまり、当事者が自ら持っている具体的な解決イメージを重視し、問題が解決した状態を短期間で実現することに焦点を当てるのです。およそどのような問題も永遠に続くことは無く、どのように深刻に見えても、問題が起きていないときや問題が比較的軽度の状態、すなわち「例外」があるということを意識させ、短期間での当事者の自立を支援していきます。
先のカエルのいじめ被害にあったご家族にこう語りかけたことがあります。
- 今、息子さんはどのような未来を手に入れたいですか。
- 生物学者になりたいという夢をかなえてあげたいですね。
- 希望する高校や大学に入学するといいですね。
- 将来、夢がかなってから、いじめた人を見返すこともできますね。
- 息子さんはセラピーを受けることができますよ。
- 今、いじめ被害を語ることは良いことです。
今の学校で、いじめ抑止となり、自分のことだけでなく、他の生徒に役立つことでしょう。
- でも、どうしても納得いかないときは、過去のことを司法的な手段で訴える方法もありますが、メリットとリスクがあるので、司法の専門家からアドバイスを受けることができます。
- お父さんと話し合いましょう。
- お母さん自身もどうしても怒りが収まらないということでしたら、アンガー・コントロール・マネジメント(怒りの感情のコントロール訓練)を受けることができます。
このようなご提案をした結果、息子さんは「大切なことは自分で決める」と言いました。その気持ちを尊重し、息子さんの強みを強化する方針を立てたのです。お母様には、毎週1回約3か月間、アンガー・コントロール・マネジメントを学び、実践する支援を行いました。お母さまが冷静になるにつれ、息子さんの登校も継続し、成績も伸びていきました。